5章・はじめに~-1「誰も教えてくれない「商売のウラ」のこと」
・排出権取引が商売の裏を教えてくれた
ここから、「何でも商売のネタになりうる」という話をします
誰でも「地球温暖化」という話題を一度
は聞いたことがあるでしょう。そして、その原因は、CO2(二酸化炭素)が増えてしまったからだ、という解説も聞いたことがあるはずです。ハイブリッドカーも、ガソリンを使う量が少なく、それが地球にやさしい、という文脈で語られていますよね。
ただし、CO2がほんとうに地球の温暖化の原因かはまだ意見がわかれるところです。また、地球の温度を上昇させる気体を「温室効果ガス」と呼び、CO2は一部にすぎず、それ以外にも多くのものが原因であるという人もたくさんいます。とはいえ、CO2を筆頭の「悪者」と称して、それを削減する試みが世界規模で行われようとしているのです。
しかし、結局のところ、金銭的なインセンティブのないところで人は動きません。要するに誰だって「なんかトクすることがあるなら、CO2を削減してもいいよ」という素直な感情を持っています。温暖化はたしかに大変な問題かもしれません。ただ、一人だけ原始時代の生活に戻れといっても、誰も聞く耳を持たないでしょう。
そこで、世界規模で次のような「仕掛け」が創出されました。
- CO2を削減すれば「クリーン」で「先進企業」であるというイメージの流布……エコロジーを推進しCO2を減らすことができればすぐれた会社であるという認識が広まり、消費者はその会社の商品を選択することになりました
- 排出権取引の創出により、温室効果ガス排出を削減できれば、それによりお金が儲かることになった……温室効果ガスを排出することを「権利」と規定し、それを「商品」として世界中で売買可能とした
1.は、わかりますよね。CO2削減に取り組んでいます、という会社の商品を優先的に買いたくなる気持ちがありませんか。ハイブリッドカーも、もちろん購入者のガソリン代を浮かせるという効果もあるものの、「ハイブリッドカーに乗るくらい環境意識が高い人だ」というイメージを販売していることを忘れてはいけません。ただ、より興味深いのは2.のほうです。