4章・(4)-1 商売の稼ぎ方の変化とぼくたちの将来

キーワード「フロントエンド」「バックエンド」「フロントエンドの無料化」

 

・無料というフロントエンド商品

 

無料化が変えるものは何でしょうか。それは商売のやり方だけではありません。大げさに言うのであれば、私たちの働き方も変えるものです。これまでの働き方が、宣伝広告や足を使ってお客を集めていたものだとしたら、これからは商品そのものが「営業マン」になります。モノを売るのではなく、モノを配ることに注力する時代。無料化が指し示してくれるのは、そんな将来です。

ここで、商品を二つにわける考え方があります。

  • フロントエンド商品……お客との接触を試みる商品で、多くの場合は安く手軽なもの
  • バックエンド商品……フロントエンド商品のあとお客に販売する商品で、多くは高額で売り手の利益をあげるもの

もちろん、この二つは抽象的な概念にすぎません。ただ、記憶がありませんか? 目玉商品につられて小売店に行ったところ、その買い物と同時に何か高額商品を買ってしまったことが。私はかつて家具専門店で安い収納ボックスを買いに行くついでに、高価な本棚を買ってしまったことがあります。宣伝していた収納ボックスはフロントエンド商品で、高価な本棚がバックエンド商品というわけです。

これは特に新しい手法や考え方ではありません。「客引き商品」という言葉があるとおり、最初は安い商品でお客の目を引き、その後そのお客にたくさんの商品を売りつけることはありふれています。それは多くの商売に共通していることです。

現在の状況は、「フロントエンド商品の無料化」ということができます。繰り返さないものの、まずは無料商品で客を寄せ、利益をあげることのできる仕掛けに持ち込むというわけです。

少し突飛かもしれませんが、自動車が無料になる商売を考えてみましょう。自動車がタダになると、欲しがる人はたくさんいます。自動車メーカーは、自動車そのものをフロントエンド商品として活用し、そこからどのようなバックエンド商品が可能でしょうか。

まず、内装。タダであればかなりダサいものであるとします。それを変更できるのが純正品だけであれば、自動車を気に入った人たちが切り替えようとするでしょう。また、その自動車は、メーカーが指定したガソリンスタンドでしか給油できない、というアイディアも面白いでしょう。また、車検も同じ工夫ができるはずです。たとえば、乗車するときに必ず特定企業の宣伝を聞かなければならないとか……。商品は無料にしたとしても、多くの代替する稼ぎ方があるでしょう。

もちろん、自動車がタダになるとは、まだまだ実現出来そうにありません。ただ、これまで、無料になるはずはないと思われていたものも、前節で見たとおり「追加コスト」が限りなく低くなるような生産革新が起これば、それも夢ではありません。

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