5章・はじめに~-2「誰も教えてくれない「商売のウラ」のこと」

・すべてが商品になる日

 

「排出権取引」により、各国々は「温室効果ガスを排出すること自体」を権利として相互認識しだしました。これは、すごいことです。ある国は排出権が余っているから、どこの国に売ってしまおう、ということができるようになりました。

1990年代にアメリカで始まった有害物質の排出権利を売買するシステムは、進化しいまではヨーロッパにも広がっています。京都議定書という、京都で行われた世界的な環境会議の結論としても、排出権の国間取引が認められました。ただ、そもそもこの権利という「商品」は形もなく、完全にヴァーチャルなものです。

あなたの家庭は自治体からゴミを週に2キロまで捨てることを許可されています。しかし、あなたはエコな生活を続けることで週に1キロしかゴミを出しません。では、残りの1キロを、隣の浪費家で非エコな奥さんに販売してしまえ、というわけです。あなたの家庭を「途上国」に、隣の奥さんを「先進国」と読み替えてみてください。これは現在の状況にあてはまります。

就任直後の日本国の首相が国連総会で「温室効果ガス25%削減」を謳ったことがありました。これを、単に努力や技術革新で成し遂げるのだろう、と考えていた日本人はたくさんいましたが、実態はその多くを途上国(やロシア等)からの排出権購入で賄おうとしたものです。そもそも形のない「権利」を購入することで目標達成、というわけですね。

「売る、買う」という商売の対象は、モノから金融、情報と流れ、ついには情報ですらない仮想の権利にまで発展しました。ある人は「高度化された抽象概念が商品になった」といいます。排出権取引の誕生が教えてくれることは、商売の多様さを改めて教えてくれました。

それは、この世においては、すべてが商品になる可能性があるということです。

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