4章・(10)-1 ボトム・オブ・ピラミッドという新たな市場
キーワード「先進国」「途上国」「BOP」「新たな市場」
・ささやかな富が集まったら
さきほど見たような途上国の富の拡大を、一つの商売のチャンスと見ることもできます。途上国で富が広がるとは、途上国に住む人たちの収入があがるということです。たとえば、ある商品に、アメリカ人や日本人のように1000円は支払えないかもしれないけれど、500円くらいだったら支払えますよ、という人たちが増えてきた、ということでもあります。これまでは100円くらいしか支払えなかったけれど、500円を支払うほどには余裕がでてきた、というわけです。
それは、途上国にいる一人だけを見ればたいしたことはないかもしれません。それなら、先進国の国民にモノを販売したほうが良いのではないかと考えてしまいます。しかし、途上国には、それまで誰もモノを売ってこなかった莫大な市場があります。途上国の人たちが支払える金額はささやかなものかもしれないけれど、それを集めれば先進国以上の大きな商売が可能というわけです。このことを「ボトム・オブ・ピラミッド(BOP)」と呼びます。
- ボトム・オブ・ピラミッド(BOP)……途上国で少額を支払える消費者がたくさんいる市場を指す
ピラミッドの底辺というこの訳は、そのままイメージしやすいのではないでしょうか。たしかにピラミッドの頂点はお金持ちがたくさんいるかもしれない。だけど、ピラミッドの底辺には莫大な数の「隠れていたお客さん」がいるのです。途上国の発展とともに、会社がここに目をつけたのは当然でした。
もちろん、高級シャンプーは売れないかもしれません。しかし、先進国でもう時代遅れになった安価なシャンプーであれば販売のチャンスはいくらでもあります。しかも、それらの安価シャンプーであれば、技術発展から以前よりも安くつくることができ、さらに途上国内でも生産することができるのです。技術の発展はコストを安くするだけではなく、途上国の技術移転というところに至っています。