4章・(9)-2 賃金がフラット化する世界とは
・あなたの仕事がなくなる日
では、どのように富が途上国へと広がっていくのでしょうか。
日本企業が外国に工場を設立したとします。すると、安く働いてくれればいいといったって、教育は必要ですよね。商品の質も上がります。すると、より良いものを作ることができるようになり、評判があがっていくのです。一方、日本で同じような仕事をしている人たちがそれまでに、違ったもっと付加価値のある商品を開発しておけば、それに特化することができます。それまでの仕事は全面的に海外に移行することができますからね。
しかし、困ったことが二つ起きます。
- 海外の労働者の実力が上がったことにより、給料もどんどんあがってきました
- 日本は付加価値の高い商品を開発することができず、給料があがったとはいえ、日本人に比べればまだ安い外国にどんどん労働を委託するようになりました
これにより、日本の労働は空洞化し、外国の労働者に富を生むことになるのです。まだ、たとえば中国の労働者の給料が日本人のそれと同じ水準にまでは届いていません。しかし、その差は着実に縮まってくるはずです。何年、あるいは何十年かかるかはわかりませんが。
この例では工場作業者をとりあげました。ただ、これに留まるわけではありません。その後に実際起きているのは、この本を読んでいるようなホワイトカラー(営業や総務・経理などのスタッフ業務)の仕事が海外に流れていることです。経営者からすると、日本人に給料を計算してもらうのも、インド人に計算してもらうのも、なんら変わるところがありません。これを現在の言葉でいえば、海外への「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」というものです。早い話が業務の外注化ですね。
グローバルに広がる商売の波は、日本人などの先進国に住む人たちの仕事を奪い始めました。これは嘆くべきことかもしれません。ただ、逆にいえば、途上国の人たちができないような付加価値の高い仕事を求められているということもできます。
ピンチは、ほんとうの意味でのチャンスでもあるのです。まずは今日、自分の仕事が海外の人たちに取って替られないか検討してみませんか。