3章・はじめに~-2「倒産してしまった会社がお金の回し方を教えてくれた」

・有名人のお金学習事始め

 

稲盛和夫さんという有名な経営者がいます(京セラを創業した人です)。この稲森さんの有名なエピソードに、経理部長と利益について議論をしあうというものがあります。稲森さんが経理部長に、決算書上の利益を見せてくれ、と依頼したときの経理部長の返事は、そんなお金はありません、でした。ここで、稲森さんは決算書上の利益と、実際のお金が異なることを知り、勘の鋭い経営者としてその乖離を実務的に埋めていきます。それが稲森さんの有名な経営手法につながっていくものの、ここでは割愛。

ただ、それが「キャッシュフロー経営」というものの原点であることはお伝えしておきます。稲森さんの気付きの優れたところは、「実際のお金がなくなれば会社は立ち行かない」という当たり前の事実にありました。「キャッシュフロー経営」とはのちほど説明するとおり、現金こそを重視するやり方です。それを稲森さんは実学として編み出したのでした。

前章で説明したとおり、お金の受け取りと支払いのタイミングのズレもあります。また決算書上では、商品が売れたときに費用を計算しますから、それ以前に出て行ったお金は考慮しません。これらが表面上の利益を創出し、でも実際のお金が減ってしまうという現象を引き起こします。

もちろん、会社に理念や理想は必要です。でも、お金というものを理解し、その回し方を知ることは、それ以前に必要になります。お金とはどんどん増えていく習性を持っているという事実。また、お金の支払い方の方法や利子・金利というものの考え方。それらが商売の基本を作り、また強い商売への一助になってくれます。

お金とはさまざまな形をとるものです。紙幣に化けたり、電子上のデータに化けたり、最近では家電量販店のポイントに化けたり。どんな形であれ、得ることのできるお金よりも、使ってしまうお金のほうが多くなってしまえばゲーム・オーバーです。

もちろん、ほんとうのゲームであれば負けても愉しいかもしれません。ただ、突然やってくる倒産が、それほど愉しいものには思えません。「こんなはずじゃなかった」と言わないためにも。お金というものの回し方、その基本についてこれから学んでいきましょう。

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