4章・(5)-2 デフレ、インフレと商売の関係
・ほんとうのインフレとデフレ
ただし、ここで注意いただきたいことがあります。正確には「デフレ」とは、すべての商品の価格が相対的に等しく値下がりすることです。「インフレ」とは、すべての商品の価格が相対的に等しく値上がりすることです。
- デフレ……相対価格は変化しない、一般的な物価の下落。経済の活動に影響を与えない
- インフレ……相対価格は変化しない、一般的な物価の上昇。経済の活動に影響を与えない
デフレのときのことを考えてみましょう。だって、もし物価がすべて5%下がって、給料も5%下がっているのであれば、いかなる買い物にも影響しませんよね。いまの日本では、「デフレだからモノが売れない」という言い方がなされます。しかし、それは正確ではありません。「海外に負けてしまう商品や、もう時代遅れになった商品の価格が下がっている」わけであって、すべての商品が一律下がっているわけではないからです。現に、ガソリンの価格は「デフレ」になっていませんよね。現在は、「下がるべき商品の価格が下がっている」状況といえます。
ほんとうのインフレやデフレはきわめて貨幣量の問題です。しかし、本書は経済学の教科書ではないので、ここには立ち入りません。それより重要なのは、商売の観点からすると、一般的にいわれている「デフレ」とは、その商品が危険水域に入ったことを意味するということです。日本では、「安い海外の商品を輸入するな」という保護主義的議論がなされることがあります。しかし、これは明らかに倒錯した思考です。本来ならば海外の安価な商品を買えば、その分日本は豊かになります。それでも国内にしがみついているから、国内商品の価格下落が起きるわけです。そして価格を下落させることなく販売できるものこそ、ほんとうは私たちが特化すべき商品といえるでしょう。
価格下落は単なる不況の産物ではありません。私たちが生産する品目の見直しを、強く迫る一つの「兆し」なのです。