3章・はじめに~-1「倒産してしまった会社がお金の回し方を教えてくれた」
・会社は潰れる、いつだって
あなたが勤めている会社は「絶対に潰れない」といえるでしょうか。
ほとんどの人は、無根拠な信仰のなかで生きています。有名な英会話教室が倒産したことがありました。しかも、突然です。ニュースで画面いっぱいに映し出されたのは、会社が倒産したことを知らずに、いつもどおり出勤してきた講師たちの困惑の顔でした。「こんなことになるとは予想していなかった」。そう彼らは語りました。
ただ、前章で見た通り、多くの会社は損益分岐点が高く、黒字確保にちょっとの余裕しかありません。赤字が続けば、さらにもしそれが隠蔽されていたとしたら、「その日」は突然やってきます。「倒産すると思えるキッカケはなかったのか?」。そう問うても答えは決まっていました。「まったく」。
私は運良く勤務会社が潰れたことはありません。ただ、経験者に聞くとそれは何の前触れもないものだといいます。私は利益や原価というものを学び続けていった過程で、会社の倒産など、ごくありふれたものではないかとすら思うに至りました。
以前、ある有名な経営者の本を読んでいると、「もっとも上手い会社の潰しかたは、自分以外誰も知らせずに、ある日突然潰すことだ」と書かれていたことを忘れることはできません。たしかに、潰れる直前までは社員にマジメに働いてもらっていた方が、まだマシですからね。最後のあがきを行うためにも、社員に知らせるべきではないかもしれません。
ただ、「会社は順調に利益が出ている」と思っていた社員にとっては青天の霹靂です。利益は出ていたはずなのに、お金が足りずに倒産してしまう。このような奇怪なことが起きるからです。