1章・(3)-1「安く売る」「誰も売っていないものを売る」は商売の基本
キーワード「薄利多売」「非競争」「ニッチ商品」「リーダー、フォロワー、ニッチャー、チャレンジャー」
・安く売る自由と高く売る自由
私が処女作を出版したとき、周りから「一冊目は出せても、二冊目は出せないよ」と言われました。私は、原価計算や仕入れ・調達・購買を専門にしていますから、「そんな需要なんて無い」というわけです。しかし、ありがたいことに、私が書く文章という「商品」は、十冊以上の著作として結実しました。
商売をはじめて何かを売ろうと思ったら、二つのどちらかを意識することです。一つ目は、「他よりも安く売ること」。二つ目が「誰も売っていないものを売ること」。どんな商売でもビジネスでも、この二つが基本です。もし、あなたがパン屋をはじめたとすると、商売を成功させるには、「味を確保したうえで、他店よりも安く売る」「そこでしか買えないパン、あるいは味わえないパンを売る」という二通りから選択せねばなりません。
前者の「安く売る」のモデルは、薄利多売方式と呼ばれます。一つの商品から得ることのできる利益は少額であっても、たくさん販売することによって利益「額」を確保します。薄利多売といってもバカにはできません。有名な会社は、ときに激安商品で市場に参入し、その販売量によって他の利益額を圧倒するからです。ただ、小さな店ではジリ貧に陥ることもあります。
少しだけ用語を説明しておきましょう。1.「プロダクトアウト型」とは、独創的な商品によって市場の需要を創出するもの。「マーケットイン型」とは、市場の声を聞き、それを商品開発に反映するやり方です。2.「非競争モデル」とは、そのままですね。たとえば、冬山の山頂で缶コーヒーを販売する業者はほとんどいません。競争がないから、一本1000円でも販売できるわけです。大手企業が目をつけていない地域で商売を開始することで、価格を引き上げることができます。3.「ニッチ商品モデル」、「スキマ産業モデル」とは、既存商品や既存サービスでは満足できなかった層に向けて、より機能や利便性・専門性を高め販売することです。