1章・(9)-1「価格差」があるところにお金を稼ぐチャンスがある
キーワード「価格差」「裁定取引」「儲けのタネ」「英語」
・なぜか発生する価格差と、それによる稼ぎ方
「価格差を利用する」。これが商売の基本だと説明してきました。このように、市場のあいだで、商品が異なる価格で売られているとき、安く買って高く売ることで利益を得ることを、「裁定取引」と呼びます。
この「裁定取引」とは、通常は株の売買によく使われる言葉です。似たような金融商品が二つあったとします。理論的には二つは同じ値動きをするはずです。しかし、さまざまな理由で片方が高値、もう一方が安値だとすれば、安値の商品を買って市場価格が理論値に近づいたときに売ってしまえば「儲け」になります。そのさまざまな理由とは、片方の需要がたまたま多かったり、少なかったりする場合などです。
通常は、このような「裁定取引」はなかなか実現できない、とされています。市場には多くの参加者がいるために、そのような取引に群がっては、価格を均一化させてしまうからです。
しかし、実際はこのような「裁定取引」は全体の取引量の5%程度に上ると実証研究がなされています。よく「株を売り抜けて何億円を稼いだ」とか聞きますよね。
株取引と似て、私たちは海外旅行に行けば、日本で売られている商品がその何割引で販売されていることに気づきます。そして、それがこれまで説明してきた「価格差」による稼ぎ方の基本となるものでした。
では、なぜこのような価格差が生じるのでしょうか。それは、市場というものが完全ではないからです。ちょっとだけ難しい話をすると、経済学ではすべての売り手と買い手が、あらゆる情報を持っていることを想定しています。その両者が需要と供給を比べ合って価格を決定する世界です。しかし、そんなことはありませんよね。日本にいる誰だって、アフリカの奥地で売られている果物の価格に物流費を加えて計算して、近くの八百屋と比べているわけではありません。逆に、だからこそ、その八百屋にとっては稼ぐことができるのです。