1章・(5)-1「価格差」を使って稼ぐ
キーワード「海外市場」「価格の歪み」「商社」「為替」
・世の中に存在する300円ジーンズ
1000円を切ったジーンズが日本で話題になっていたころ、中国のあるメーカーからジーンズの見積りを取ると、わずか300円程度でした。また、ある同一銘柄の500ミリリットルのビールが、日本では300円、飛行機で数時間飛んだ香港では90円で販売されていたこともあります。もし、この世界がどこでもドアでつながっていたとしたら、同一商品、単一価格が実現するかもしれません。しかし、実際は場所や需要量の違いによって、同一商品にさまざまな価格がつけられ販売されています。
その価格の歪みを使って稼ぐことがもっとも簡単な稼ぎ方です。前節では、販売価格をどのように決めるのかを説明しました。「原価主義」であれ「非原価主義」であれ、かかっているコストと、その販売価格の差が利益になります。では、その販売価格が決まっているとしたら、どのようにして利益を増すことができるのでしょうか。簡単ですよね。そのコストを下げれば良いのです。
安く買ってきてコストを抑える。そして、高く売れるところで販売する。これだけです。それから派生する、いくつかの例をあげておきます。
- 場所(市場)による「価格差」を使ったモデル:海外との価格差や、国内での地域価格差を利用
- 時間差による「価格差」を使ったモデル:時期や季節、時流によって価格が低くなるときに仕入れ、それを高値で販売
- 機会による「価格差」を使ったモデル:労働などによる、自己価値の最大化
これらは次節以降、順に説明していきます。
かつて「商社冬の時代」といわれた時代がありました。商社とは、商品を「右から左に流して、口銭を得る」モデルです。自らは何の生産物も生み出さないこの業態は長続きしないだろう。そう言われていたのです。しかし、何十年も同じことを言われながら、商社の存在意義は薄れていません。これは、価格差を使って稼ぐことが、どの時代においても商売の基本だからでしょう。