3章・(2)-2 商売でのお金の支払い方(現金、手形、ファクタリング、ツケ)
・明日、会社がなくなっても
このなかで説明が必要なのは「手形」「ファクタリング」の二つでしょう。「手形」は、指定期日を過ぎると売り手が銀行で現金化できるものです。たとえば、90日手形で売買しているとすると、その手形を受け取ってから90日以降にやっと現金にすることができます。もし、それ以前にお金がほしければ、銀行などに割り引いてもらって、目減りした現金を受け取るしかありません。
ただし、手形は後日やっと現金になるので、受け取る側としてはあまり好ましいものではありませんよね。それに、もっとも怖いのは、手形を現金化するまでの期間に買い手側が倒産してしまうことです。手形は、買い手会社の信用を基に発行されます。だから、買い手会社が倒産してしまったら、銀行も手形を現金には換えてくれず「売り損」にしかなりません。
それを解消するのが「ファクタリング」というものです。手数料はかかりますが、それが保険料として作用し、買い手の状況にかかわりなく銀行が支払いを約束してくれるものです。これは、不安定な社会のなか、広まってきました。
ちなみに、ある会社には手形で、違うある会社には現金で早めに支払う、ということが認められないことがあります。下請法、という中小企業保護を目的とした法律に該当するところはこの限りではありませんが、本論ではないので省略させてください。それは、まさに「今日の1万円」と「将来の1万円」が違うことにあります。他の会社には手形で支払っているのに、特定のところだけ現金で支払うと、それは現金支払いの会社だけに不当な利益を提供しているのと同じだからです。
お金は動的だ、と私は言いました。それは、概念だけの話ではありません。商売の方法に、大きな影響力を持つものなのです。