3章・(3)-1 どうして現金だと仕入れ値が安くなるのか?
キーワード「倒産リスク」「期間乖離リスク」「金利リスク」「現金払い」
・現金に魅せられて
「はよ、決めんかい!」
現金を抱えた老獪な紳士。そして、目の前には電卓を叩きながら、何やら計算をしている若い男性がいました。「はよ、計算しいや」。外見と異なりその紳士は、急き立てるように伝えていました。
その紳士はブローカーの一人。宝飾品を仕入れては売り飛ばすことが仕事です。私は、彼が札束を取り出しては、その場ですぐに支払っていたのが印象的でした。売り手も、現金を見せられては、多少値引きをしても販売してしまうのでしょう。しかし、その売り手の態度は特別間違ったものではありません。
さきほど、「期日指定振込」「手形」、そして「ツケ」という、買い手側の支払い方法の多様性について述べました。これには、「ファクタリング」という手法が登場してくるように、売り手側にとっていくつかのリスクがあります。
- 倒産等のリスク……支払いが完了する前に、倒産あるいはトラブルにより契約が不履行になってしまう
- 販売から受け取りまでの期間乖離リスク……販売からお金の受け取りまでに時間が空いてしまうため、その間の運転資金が足りなくなってしまう可能性がある
- 金利リスク……ほんとうはすぐに現金で受けとれば、そのお金を使ってさらに商売ができるところ、それができない可能性がある。むしろその期間は利子を支払う必要があり、その分ソンをする
これらを解消してくれるのが、代金を「現金で受取る」ということです。