調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(3)-11
では、自社で電源設備を確保することができるかといえば、残念ながら非常に難しいと言わざるを得ません。今から10年程前に、500kw以上の需要家に対する電力供給が自由化されました。当時、原油の価格が非常に安価であった為、ほぼ全国の大手流通業の店舗には自家用発電機が設置されました。しかし、原油価格の高騰と共に、地域電力会社の料金と逆ざやが発生し、自家用発電機の稼働停止が相次ぎました。
今の日本では電源そのものを確保する手段が、多くの企業の場合、実質的に一つしかありません。地域の電力会社に対峙できる企業もそう多くはありません。安定供給されていれば良いというのがこれまでの姿でした。その安定供給が失われた今、電力確保は企業経営にとって重要な課題です。しかしここしばらくは、地域独占の電力会社から供給が続くでしょう。バイヤーとしてとても残念ですが、代替サプライヤーも確保することができません。
今、バイヤーにできることは、消費量を下げることへの貢献だけです。例えば、同じ冷房能力を持つエアコンは、10年前との比較で約40%電力使用量が削減できています。他にも、蛍光灯のLED化、企業内設備の電力消費量を診断し、削減できた電力料金の差額によって省エネ費用を負担するエスコ(Energy Service Companyと呼ばれる省エネルギーに関する包括的なサービスを提供する会社の総称 )事業を営む会社もあります。地域独占状態で、安定供給で満足していた電力は、需用家である私たちに、発電・送電の仕組や、消費量に関する知識がほとんど無いのが現状です。電力消費を削減する方法や、省エネを実現する新規設備導入の情報収集をおこなって、社内へ周知する。そのことで、電力使用量15%削減を達成に貢献すると共に、将来の電力自由化に備えて、電力供給に関するノウハウの習得を開始しましょう。。電力消費量を15%削減した状態で100%の企業活動を実現するためのアクションは、震災後のほんとうの平常化への第一歩となるはずなのです。