調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(3)-12

2)ポスト3.11への戦い

私は震災発生後の5月と6月に二度海外を訪れました。5月、日本人である私は、震災について話をすることが多くありました。ところが6月、震災が話題となることは一切ありませんでした。日本とグローバルマーケットにおける東日本大震災の認識の差を強く感じた瞬間です。海外の多くの地域では、東日本大震災は過去の出来事になりつつあります。今でも毎日のように福島第一原子力発電所に関する話題がトップニュースとなる日本とは大違いです。

今回の震災で大きな被害を受けた東北地方の企業のトップが記者会見でこんな発言をしていました。被災による供給停止が解消された後、お客様は再び購入してくれるか、再び顧客となってくれるかどうかとの質問に、そのトップは戻ってくると回答していました。この企業は、当初の見通しよりも早く復旧できると発表していました。納入再開は、あらゆる努力を惜しみなくおこなった結果でしょう。被災地と同じ国の市民として、納入再開までお客様が待っていてくれる、そう願いたい。しかし、将来的に顧客が待ってくれる保証などありません。これからの事業運営は、東日本大震災が再び襲ったらとの前提を我々に突きつけ、バイヤーとしてはサプライヤーへ突きつけてゆく課題です。今回の供給停止。サプライチェーンの断絶によって、サプライヤーのデュアル・マルチソース化を求める動きは確実に増加するでしょう。一方で、グローバルベースで複数拠点を備えられるサプライヤーばかりではありません。従来のサプライヤーに対して一律に、複数の製造拠点を持つことを求めることはできません。短期的にはコストアップに繋がりますし、そもそも複数拠点化に耐えられる企業は、日本の中小企業にそう多くないでしょう。それでは今後、どのように取り組むべきでしょうか。私は二つ考えています。デュアル・マルチソース化以前の課題と、デュアル・マルチソース化そのものの話です。

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