調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(2)-18
例えば、震災直後に発注した部品数量の見直しです。ある部品では、震災直後から3月末までに単月での受注額が前年度対比で80%も増加しました。マスコミ報道を通じて目にした震災の被害は甚大でした。ただ、80%もの増加が妥当かどうかは疑問です。震災被害による調達リードタイムの長期化を懸念した前倒し発注と考えるのが妥当でしょう。皆さんも同じような発注をおこなっていませんか。発注時は、震災後という非常時の判断基準をベースにしていたはずです。そのような発注を今、現状に照らし合わせて見直すことが必要なのです。地震発生直後、そのような発注量を増やすことは、判断として妥当だった。そして、被害の全貌が明らかとなり、復旧の見通しが明らかになるにつれて、ほんとうに必要なものがわかってきます。
震災から時の経過と共に、需要量と供給量のミスマッチは修正が難しくなります。特にリードタイムの長期化を念頭におこなった前倒しで発注は、過去の決定の見直しを検討すべきです。最新の需要動向を踏まえてなお必要なのであれば、過去の決断の正当性が証明されます。逆に乖離を見いだした場合には、できるだけ早く修正することが必要です。当然、サプライヤー側の都合もあるでしょうから、その辺の事情は踏まえた上で、一方的な押しつけになることは避けなければなりません。そのような修正活動ともよべる動きが、震災後という特異な状況からの脱却には必要なのです。