調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(2)-13

コラム~近いからこそわからない

今回の震災で被災した宮城県のサプライヤーを訪問した際のことです。幸い内陸であったため、津波による被害はまぬがれました。地震の揺れと、その後の停電によって復旧が遅れていました。これからの対応策を話し合っている中で、ふいに津波の話になりました。サプライヤーの担当者は震災発生後の数日間、沿岸部があれほどの津波に襲われた事実をしらなかったそうです。

話をしてくださった方とは、震災の翌々日に電話で話をしていました。揺れによる設備の被害と停電によって、復旧の見通しがたっていませんでした。当時、私は繰り返し放映される津波の映像を何度も見ています。当時の会話を思い起こしても、津波について話をした記憶はありません。私は、当然相手は知っていると思いこんでいました。訪問したサプライヤーは、山間の中に位置し、市街地からも距離があります。停電でテレビも見ることができませんでした。逆に数百キロもの距離を隔てた私が津波については情報を持っていたわけです。震災後は道路も寸断され、なかなか自分で動くこともできなかったと話されていました。

震災後、電気というインフラが失われた瞬間に、一般的な情報ソースへのアクセスも制限されてしまうわけです。被災の度合いが大きな地域ほど、実は得られる情報が少なくなってしまうわけですね。被災地への情報収集では、個人間や会社間での情報伝達手段の確保がクローズアップされます。しかし、被災地からの情報収集に際しては、震災によって誰もが知りうる情報が伝わっていない、情報収集能力が落ちていることを前提にする必要があるのです。情報を確認する側には当たり前に伝わっている情報が、確認される側では価値があるかもしれないのです。

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