調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(3)-3

二つ目は、原材料領域のことだ。たとえば、加硫剤や酸化亜鉛という物質名を聞いても、どんな影響があるのか事前把握するのは難しい。しかしいまであれば西城はその重要性がわかる。半導体の生産を止めていたのはこれらの物質だったからだ。ティア2サプライヤーの工場がこれらを調達できずに生産ができないという。ティア2、ティア3の工場所在地を聞いていても、そこが使用しているプロセス加工材までを完全に把握することは難しい。田中を悩ませたのも、塗料の入手困難だった。塗装設備や、そのベースとなる樹脂成形工場の状況は把握していた。しかし、塗料が入らないとは想像すらできなかった。食品を扱うバイヤーたちは梱包材の不足に悩まされた。メインではなく、むしろ補助的な資材をいかに情報収集していくか。西城は今後に課題が残った、と感じた。

牧野はアルミ電解コンデンサのサプライヤーから情報をヒアリングする過程で、奇妙な一致に気づいていた。牧野の調達部門では、同製品の調達先は4社だった。競合体制構築の意味もあり、複数社購買にしていた。サプライヤーの生産状況をヒアリングすると、共通するのは薬剤不足だった。4社が4社とも同じ材料で困っているという。さらに各社に訊いてみたところ、まったく同一メーカーの同一工場からのものだった。「代替品を探しています」とサプライヤーの営業マンはいう。そのセリフまで他社と同じだった。おそらく、同じ大体薬剤を探すのだろう。牧野は、見た目は異なるところから調達していたとしても、源流に遡れば同じメーカーがボトルネックになっている。もし、新たな薬剤に切り替えたところで、そのメーカーが同一・類似であれば、同じような災害時に、また騒ぎになってもおかしくない。ほんとうのリスクヘッジとは何か、と牧野は考えこんだ。

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