調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(2)-7

三つ目(「客先からのキャンセル」)。外村はこのころ、サプライヤーへのお詫び巡業を経験している。自社生産ラインをつなぐために、「絶対に納入遅延させないでください」と依頼したのは、たったひと月前のことだった。そして5月上旬には、その発注自体をキャンセルすることになった。外村の企業が商品を納めている客先から「注文をキャンセルさせてほしい」と申し入れがあったからだ。客先からのキャンセルを受け入れれば、当然、生産する予定の製品に使用する調達品も無用となる。

あれほど納期遅延しないようにお願いしたにもかかわらず、挙句の果てにキャンセルしてしまうのは苦しかった。「生産しないことになりました」などといおうものなら、「あれだけ急がせといて、キャンセルするんですか」とサプライヤーの営業マンが怒りはじめた。しかも、外村の上司は、かつて「他社よりも早く納入しろ」とまでいっていた。その果ての注文取り消しだった。外村は「客先がもう不要だっていうんです」と付け加えるのがせいぜいで、ひたすらお詫びを繰り返すしかなかった。外村は、これまで何のために頑張ったのだろう、と思った。

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