調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(2)-1

5月第一週。世間はゴールデンウィークに突入していた。5月2日(火)、6日(金)を休み10連休にする人たちも多かった。しかし、牧野はある大きな異変に気づき、ゴールデンウィークの多くを会社のデスクで過ごすことになった。「ない」。製品がない。牧野が調達しているものはカスタム品が多い。よって震災後に注力してきたのもカスタム品が多かった。

標準品はそれなりに手に入る――、はずだった。ところが、5月になると標準品の在庫が切れたというニュースが次々に飛び込んできた。震災直後であれば、探せばなんとかなったはずのものが、探してもどうしようもない。あったとしても、3月11日以前の数十倍の価格で売っている業者が多い。牧野は調達・購買に携わる者として、古典的なQCD確保を念頭においてきた。ただ、そのうちC(コスト)を犠牲にすればモノが確保できる場合はどうするか。生産管理からは調達品の納入を問い合わせる電話が鳴り止まない。

牧野は課のメンバーに「これまでの10倍以内の価格であれば購入しても良し」と、社内規定を逸脱する通知を送った。この選択が正しいものだったのか、牧野は思惟を重ねることになる。

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