調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(1)-6
笹賀は同時にリスクヘッジについても思惟を重ねることになった。笹賀は、調達において、すべてシングルソースを是としていたわけではない。むしろ、マルチソース化を進めていた品目もあった。しかし、今回の震災で予想外だったのは、そのマルチソース先2社とも東日本に点在していたため、両社ともにサプライチェーンが寸断してしまったことだ。これまでは、倒産を意識してマルチソース化を進めてきた。ただ、これからは地理的分散も考慮しておく必要があった。
坂口はこのころ、全国の調達・購買関係者たちを集めた情報交換会議に参加していた。各社の調達・購買担当者たち同士で、数々の情報を提供しあい、議論を重ねることで、少しでも早いサプライチェーンの復旧を目指していた。その会議に参加していた加賀は、社内の不満のようにつぶやいた。「社内から『どの品目は大丈夫なんだ』って訊かれるけど、正直わからない。『どの品目ならダメです』ならわかるけれど」。各調達・購買担当者も、五里霧中のなか、なんとか解決策を導こうと呻吟していた。
あるバイヤーは翌日から海外メーカーのもとに飛び、代替品評価を実施してくるという。これまでの倍のスピードで切替評価プロジェクトは進んでいた。また違うあるバイヤーはこれまで見向きもしなかった国内の代替サプライヤーのもとに出向いて供給折衝を行うという。