調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(3)-16

コラム~買い占めは起こったのか

先にも触れましたが、今回の震災発生の翌週、水や乾電池、保存可能な食料品、そしてガソリンが首都圏で品不足に陥りました。マスコミの報道では、水を買い占めようとしていた親を子がたしなめるといった美談が繰り返し報道されました。

ここで考えたいのは「買い占め」の定義です。

品不足に陥った製品の多くは「一人××個まで」といった表現で購入制限が行なわれていました。要否に関係なく制限いっぱいまで購入したら買い占めになるのか。制限以上の購入を行なって初めて買い占めなのか。複数の店を回って、必要以上の数量を購入した行為はどうなるのか。買い占めという言葉は、非常に曖昧な定義ながら、震災後は大手を振って歩いていました。報道番組のキャスターが強く買い占めをたしなめる場面を目にしたのも、一度ではありません。

耳にした美談は、すべて店頭における一般消費者にまつわる話でした。美談の根拠は、被災地に回して欲しいといった被災地外で生活する人々の気持ちです。でも、一旦店頭に並んだ製品が、回収されトラックに積まれ被災地へもっていくのでしょうか。ちょっと考えにくいストーリーです。

この度の震災後、一般消費財の出荷は前年対比で250%になったそうです。人口を同じと仮定しても、震災後だから消費量が2.5倍に拡大するわけではありません。普段より多く購入することが買い占めと言われるのであれば、多くの市民が買い占めに走ったことになります。では、この買い占めをしないことで、被災地の皆さんの苦しみは減ったのかどうか。実は、ここでも今回の震災でサプライチェーンの機能の一端がおおきく失われたことが影響しています。

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