調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(3)-10

1)徐々に「わからない」ことがわかる

震災直後より数日間にわたって行なわれてきた情報収集。バイヤーの動きに比例し、時の経過と共にいろいろな事が徐々に明らかになってきます。同時に、事態を完全に掌握する状態にはまだまだ程遠いという現実も目の前に突きつけられます。震災直後は、あらゆることが一時的に震災前とは異なります。圧倒的にわからないことが多いのです。少しずつ得られた情報も、状況を明確にするというよりも、新たな疑問を生みます。これは全体像を掌握する過程ではやむを得ません。堪え忍ぶ時間ともいえます。

この段階では、入手した情報によって性急な状況判断をする必要はありません。事態は流動的であるとの前提に立って、柔軟性を残した状況判断が必要です。この時点では調達・購買に携わる誰もがサプライチェーン全体に整合性を求めることはできないのです。震災直後は企業経営の源である①人②モノ③カネ④情報のすべてが一時的に失われます。バイヤーというより人間の本能として、状況が掌握できないことから一刻も早く脱したい。すぐにでも生産再開したい。誰もがそう強く感じるはずです。しかし一方で、ではどのように動けばいいのかがわからない。大きなジレンマの中に置かれるわけです。だからこそ、そんな気持ちを押さえ冷静に「わかっていないことはなにか」について情報の中から読み解くことが重要なのです。わかっていないことを明確にして次の情報収集の方向性に再展開する。ジレンマに耐え行なうこの繰り返しが、震災後に実施する情報収集のプロセスには不可欠なのです。

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