調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(3)-5

海外にも生産拠点や支店・IPOのある企業は、現地の調達・購買担当者と連絡をとり、海外で調達実績のあるところから、代替サプライヤーを絞り込んでいった。有象無象のサプライヤーのなか、これまでであれば見向きもしないサプライヤーも含まれていた。そしてある程度のめぼしをつけて海外に出向いたものの、各社とも騅逝かぬ状況だった。生産ラインをどうにかせねばならないと考える調達・購買担当者と、これまでの品質・技術基準にこだわりなかなか新規海外サプライヤーを許可できない開発部門。この二者で争いが続いていた。Twitterでは、まさに「つぶやき」のように、調達・購買関係者から、「海外サプライヤーなんて使えねえよ、と技術部門がいいやがった」と書きこまれていた。

栃木県で働く山川優は、ドイツに本社がある顔料メーカーの代替評価に右往左往していた。このサプライヤーは、日本国内にも小名浜工場があり、そこが被災していた。小名浜工場以外にも多数の工場を持っていたものの、小名浜工場の特別な設備で生産する特定グレードのパール顔料は、色出しにおいて大変万能な製品で、全世界の塗料メーカーがこぞって採用していた。

類似した他の顔料は多々あるものの、代替は容易ではなかった。別の顔料を使って、色を再現してみる。ぱっと見た目は同じでも、厳密さが求められる。一色ずつ人が検査し、量産している製品の色との差異がないかを確認しなければならなかった。短期間で10色以上の色出しをするサプライヤーも多忙をきわめた。しかし、山川は、製品ごとにその10色×nを検査する必要があった。合計で100品目以上評価をしなければならない。気の遠くなる作業が続いていた。仕事のうち、社内部門間調整が、ほとんどになっていた。

このころ、各企業の調達・購買部門は、震災復興とともに、今回の災害から得る教訓を整理していた。多忙な納期調整・代替品評価がまだバイヤーたちを奔走していたものの、諦観に近い「将来へのきざし」が出てきたからかもしれない。企業によっては、特別チームを発足させ、これからのあるべきリスクマネジメントを議論することになった。

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