調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(3)-6
坂口は調達・購買担当者の研究会に呼ばれて、いまから将来に向けての施策として次のことを話している。一つ目。シングルソースを前提とした関係強化。マルチソースが無意味だとはいわない。ただし、ティア3、ティア4のサプライヤーが同一だったり、単一企業調達のほうが納入はスムーズだったりと、シングルソースのメリットが際立った。これからは、シングルソースにおける関係性強化を図っていくべきではないか。二つ目。ただし、源流強化が不要といいたいわけではない。今回の震災で問題となったパーツや材料に関しては、源流のサプライヤーまでを管理し、「見える化」をする必要はあるだろう。三つ目。日本は「ゼロリスク信仰」が流布しすぎた。事前にバックアップ策を練ることも必要だが、完璧なリスク想定は不可能だ。したがって、想定外のことが起きたときに、いかに柔軟に動けるかを考慮せねばならない。具体的には突発時の代替品検討フローや、コストアップしても調達できるように権限を各バイヤーに付与すること等である。
聴衆者から、権限の委譲については賛同の声が上がった。「弊社の上層部にも聞かせたい」とする意見もあった。
おそらく、調達・購買関係者であれば、同じく次の3点も同意するだろう。
- この震災における生産被害を、一日も早く復興させること。
- 被害にあったサプライヤーに適切な支援を行い、サプライヤー・バイヤー企業間の強固な関係を持続させること。
- サプライチェーンの脆弱性を克服し、ふたたび日本に震災が襲ったときにも被害を最小限化するために対応案を練ること。
このたった三つのことを実現するために、各企業や各調達・購買部門や、各担当者が呻吟していた。