調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(2)-6
16日。多くのバイヤーたちを悩ませたのが、調達金額が少ないサプライヤーへの状況確認だった。昨今のERPの発達により自動発注されている小部品がたくさんある。なかには、サプライヤーの営業マンを知らない担当者もいるほどだ。大半のサプライヤーと連絡をとった西城も、普段あまり連絡をとらないサプライヤー対しては聞きづらかった。
田代も、調達・購買部門内で共有されていた連絡リストが、主要サプライヤーのみであり、年間数千円しか調達しないサプライヤーはリスト外であることに気づいていた。もちろん優先順位は下位だろう。ただし、一つの部品だけでも欠けてしまえば生産はできない。震災時には「優先順位・高」「優先順位・低」の区分は意味がない。日ごろの業務は、優先順位が高く付加価値を産む仕事に特化させられている。しかし、災害時にはすべてのサプライヤーをひとしく調査する必要がある。ただし、そのためには人手が足りない。これも田代の調達・購買部門が想定していなかった新たな課題だった。
同時にバイヤーたちを困らせたのが、自社生産の状況把握だった。サプライヤーには納期督促を行う。しかし、そもそも、それを組み込んだ自社の製品は生産されるのか。生産管理に聞いても「それは部材の集まりしだいだ」としか言わない。ニワトリが先か、タマゴが先か。わからないままにとにかくサプライヤーの納期督促を繰り返すしかなかった、と野田は感じた。