調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(1)-10
- 混乱からの逃避と被災者からの脱却
大きな震災に遭遇した場合、なにもかもが混乱に陥ります。情報ソースを手分けして複数持つことも、誤った情報によって自らの混乱を防ぐ有効な手段です。次に起こす行動によって、新たな混乱に巻き込まれない予防策にもなります。そして、混乱から逃避することは、その後の行動に非常に大きな影響を与えます。
私も今回の震災で震度5強を経験しました。揺れている中で停電にも見舞われました。しかし地震直後に帰宅命令を受け、夕方には幸いにも帰宅できました。帰宅途中はラジオ、帰宅後はテレビとインターネットで情報収集を行ないました。混乱の中、震災の全貌についての情報収集によって、自分は被災者でないと判断しました。津波で家を流された、地震で自宅が倒壊といった直接的な被害を受けた場合、否応なしに被災者となってしまいます。今回の震災では規模の大きな余震が長い間発生していました。私の住む地域でも、ガソリン不足やミネラルウォーターが店頭から消えました。発生した震災によって、少なからず日々の生活に影響を受けたのは事実です。しかし、地震発生以降に、命を脅かすような二次的被害には見舞われていません。その頃、ほんとうの被災地では、ライフラインが止まり、ガソリン、水、食料といった物資が不足し、避難所暮らしという不便な生活を強いられていました。安全で快適な生活が失われ、どう生き延びるかが当面の課題となっていたのです。
震災に関する確かな「情報」そして今後の「見通し」を収集する意味。それは、自分が被災者かどうかを判断するためです。生命の危険を回避して、帰るべき場所が確保されたら、「自分は被災者ではない」と、明日への一歩を踏み出しましょう。自分で克服できる被災は、自らの力で乗り越える。そして一刻も早く日常生活を取り戻すのです。