5章-13:仕組み・組織体制

正直にいえば、私は、その当時、営業パーソンに複雑な感情を抱いていました。当時、その営業パーソンは40歳を超えていたはずです。自分でお願いするなり、あるいは、怒ればいいものを、営業所長に代弁させるなんて、なんて弱い人間なんだろう、と思いました。弱い人間は、自分たちの主張をしっかりと他者に伝えられないがゆえに、それが自分の優しさだったとしても、その存在自体が害悪になりえます。

ただし、営業所長の恫喝をうけて屈した私も、さらに違う意味での弱者にほかなりません。もっといえば馬鹿者です。営業パーソンが善良な弱者だとすれば、私は戦略なき馬鹿者だといえるでしょう。前者は悲劇ですが、後者は喜劇といえます。

取引先を外すとは、机上の空論ではなく、誰かと誰かの生き残りをかけた闘いです。それはエクセルで解決するものではなく、パワーポイントで書いた表面的な戦略で乗り越えられるものでもなく、ワードで書いた稟議書だけで万事解決するわけでもありません。そこには、ある意味、こちらの職業的人生を賭けた覚悟と、そして、戦略性が求められます。

誰だって、少し考えれば最悪のケースと、それの対応策も考えられたはずです。しかし、それを私はしなかった。現業部門とだけではなく、もっと取引先とも心を裸にして話し合って、眠れない夜を重ねながら最善策を考えるべきでした。その愚直さが欠けていました。

その果てに、現業部門に相談して、そして自分の仮説と本気度をしっかりと伝え、そして全社の合意を取るべきだったのです。

そんなに面倒くさいことだったら、もう調達・購買戦略とか全社連携なんてありえないよ、と感想をもつ読者も多いでしょう。いや、たしかにそのとおりです。私は「そんな苦労をするんだったら、もうこのままでいいよ」と語ってしまうレベルものこそ、私は真の調達・購買業務だと確信しています。

そして、少しであっても、その想いを共有いただける方を、すこしでも増やそうと私は奮闘しているところです。

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