5章-12:仕組み・組織体制
現業部門の期待を背負ってこそ
「若さ」というものを望郷の念をもって振り返ることが中年の定義とするならば、私は残念ながら中年なのかもしれません。羞恥もかまわず、ご紹介したいエピソードがあります。二十代の私は、そのとき、若さゆえの無鉄砲で突き進んでいました。
私は、取引先の状況をまとめ、ある一つの取引先を外したほうがよいだろうと、各部門を説得にまわりました。「でもさ、あの取引先が怒ったらどうするの」「私が受けて立ちますよ」。こんな感じです。
ある日のこと。その取引先の営業所長から、恐ろしい剣幕で電話がかかってきました。「ウチを外そうとしているんだって?」。まるで、それは社会人の口調ではありませんでした。「何か問題でも?」「いますぐ行く」。
そして、突然やってきた営業所長は怒髪天を衝く様子でした。そして、営業パーソンを隣に連れていました。そして会議室で、「そちらがそういうつもりなら、いま進行中の仕事もすべて止める」と凄まれました。そのとき、ずっと隣の営業パーソンは無言でした。「そんなことできるんですか。契約もあるし」という私に、営業所長は「私がすべての権限をもっているんだ。私が止めるといったら止まる」と怒り続けました。
あまりに異常な怒りの前に、私はこともあろうか「そうですか。すみません。お詫びします。ただ、いまの仕事は止めないでください」と頼みました。営業所長は、帰り際に、深々と頭を下げて、「お時間をいただきありがとうございました」といいました。