3章-16:コスト削減

現場部門との物理的接触

それに加えて、私が強調したいのが、現場との物理的な近さです。これまで私が見た組織の中で、上流調達がうまくいっているところは、例外なく現場と調達部門の仲が良い状態にあります。

考えてみれば当たり前で、現場と調達部門の仲が悪い状態で上流購買が実現するはずはありません。相談できるような雰囲気でないのに、いかにして技術と調達の融和が図られるでしょうか。

仲を良くするためにはどのような施策が可能でしょうか。残念ながら、絶対的な回答はありません。しかしながらここでは三つの方法を挙げておきたいと思います。

一つ目は、定期的なミーティングです。古臭い考えではありますが、やはり対面する方が良いでしょう。そこで、これからの案件、困りごと、コスト的に苦しい、などといった話をざっくばらんに意見交換するのです。それによって。お互いのメンバーの本音や人間性がわかりますし、気軽に相談できる土壌づくりが可能となります。上司が開催するのを待ってはいけません。担当者のあなたが旗振りをして場をセッティングしましょう。

二つ目は、働く場所を物理的に近くすることです。ある企業の調達部長と話していると、以前は、上流調達などという言葉を使わないまでも、お互いが相談をしながら案件を進めていたようです。ただ、組織が大きくなって別々のフロアで働き始めてから、その活発な相談は行われなくなったようです。この事実は示唆的ですね。そこでその企業は、特に若手を、現場の部門に机を間借りし、コピーから雑用を引き受けたようです。そうすると、現場の担当者が何を重要視しているかがわかりますし、何よりも人間的な密接性も高まります。調達・購買部門と、現場を、擬似的な同一部門のようにして、融合させたわけです。

三つ目は「調達月報」の発行です。調達月報とは、調達部門が毎月コスト削減や取引先の様子などをまとめたものです。PDFで構いませんのでメールで送付してください。コストをかける必要はありません。他の現場部門でどんなことをやっているか、違う現場の部門に伝達することもできます。部門が違うと、同じ技術職であっても、なかなか情報交換をしていないものです。調達部門がそれを介在する価値は高いと言えます。

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