3章-15:コスト削減

調達・購買部門の上流関与

なお現地調達部門の、工事や部材仕様への関わり方は「ゼロルック」「ファーストルック」「セカンドルック」と分けられます。

調達品の企画段階から関わっていくことを「ゼロルック」と呼びます。すなわち、一度も見たことがない状態から調達・購買部門が積極的に関わることです。そして「ファーストルック」は、調達仕様を書くタイミングから関わることです。さらに、「セカンドルック」とは調達品が決まりさらに、生産工程や工事工法なども決まった後から、調達・購買部門が関わることです。

言うまでもなく、企画段階でコストの8割が決まってしまいますから、「ゼロルック」でいかに関わるかが調達の腕の見せ所となります。

このゼロルックの段階で関わることは、製造業でいえば「開発購買」と呼びます。あるいは、業界を問わず「上流購買」「上流調達」とも呼ばれます。皮肉なことながら、これらの重要性は調達部門からしか聞こえてきません。皮肉とは、調達・購買部門以外は、この必要性を感じていないためです。

製品技術やで開発内容、あるいは工事内容やエンジニアリング仕様……。これらに精通していない調達・購買部門が上流に入ってきても、何もできないだろうというわけです。上流調達的なことはすでに現場でやっています。調達部門の力が必要なケースはなかなかありません。

よって、やはり上流調達を実現しようと思えば、まずは技術的な学習が必要です。近道はありません。そのためには高専レベルの教科書で学んでもいいでしょうし、あるいはひたすら取引先の現場に入り込んでいって技術的な摂取を重ねることも重要でしょう。

よく、調達・購買担当者のなかかで「現場が勝手に決める」とボヤくひとがいます。私はかならずそのときに訊くのですが、「ではどうすればいいのですか」と。すると、ほとんどの答えは「相談してほしい」というものです。私は畳み掛けるように「じゃあ、当初の技術部門の打ち合わせに呼んでもらえるように、私からも頼んでみましょうか。ただ、呼んでもらったら、ちゃんと発言して、調達・購買部門の意見を述べてください」というと、沈黙が流れます。

いや、これは皮肉ではないのです。「現場が勝手に決める」と嘆く調達・購買担当者は、自分がどれだけ決められるのかを考えてほしいのです。それこそ、他部門のせいにするのではなく、「見たくない現実を見る」態度だと私は思います。

ついでに、管理職側にも申し上げてきます。よく上司の方々から「若手には、貪欲に知識を学習してほしい」といった話を聞かされます。これはつまり「若手は現状では、勉強していない」という意味なんでしょう。ただ、私はそのような発言を聞くたびに、広い知識が必要な業務を与えていないのではないかと疑ってしまいます。なぜなら、貪欲に知識を学習せざるをえない環境であれば、きっと若手のみんなも学ぶでしょう。

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