2章-21:インフラ系調達・購買のコスト分析
上司の本懐
本章では、調達・購買業務のコスト分析について述べてきました。章の冒頭で上司の遺言についてエピソードを述べました。私は前章で、上司や管理職に対する同情を書いておきましたから、今回も上司擁護論を書きます……かというと、ここではむしろ逆を書いておきたいのです。
本章で紹介した、ABC分析や、難易度分析、依存度分析、など教えてもらっていない部下がほとんどです。昔は上司にも余裕があったためか、専属の教育担当者もいたためかもしれません。しかしいまでは上司は、部下にとって「何も教えてくれないのに、失敗したら文句ばかりいうひと」に成り下がっている側面は否定できません。
上司から部下への仕事の注文が適当。そうやってできあがった部下の仕事にたいして、ああだこうだと修正を依頼。その修正依頼内容も、基準がふらふらとブレているものだから、再修正されたものも、違う、違わないと議論の時間だけが過ぎていきます。そのうちに、上司に相談しないと、何もできないような部下が完成するわけです。
私などは、最初に時間を費やしたほうが、トータルの時間が少なくなると確信しています。だから、同僚に依頼する際には、欠かしてはならないポイントと、イメージをしっかり明確化してから開始してもらいます。もちろんこれでも完璧ではなく、手直しはあります。それでも、方向性をあわせておくことと、判断基準の共有は、やったほうが双方のためです。
それと、前章の内容とは別に、私は上司も覚悟があるのか、ということをいっておきたい感情にかられるのです。私がよく見るのは次のような光景です。部下の間違った発言を訂正しようともしない。「あの部下はダメだから」とハナから諦めた態度を取る。他部門との会議では、責任を取るような発言ができない。前例がないからと部下の提案を頭ごなしに否定する。重要な打ち合わせからは逃げる……。このような状況で、どれだけ部下が成長するでしょうか。
部下には自立と自律を求めても、部下にまったく響かないのは、その上司自体が、さらにその上の上司の言いなりになっている姿しか見えないからでしょう。