4-(6)-3 グローバル調達の効果とリスク
・それでも海外から買うべきか
海外からの調達の必要性を認めながら、どうも否定的なトーンで書いてきました。それは、私が「生産国に存在するサプライヤーから調達を実施した方が良い」という考えを持っているからです。否定はしていません。ただ、海外から調達する場合は、それ相当の検証が必要だと思っているだけです。私も多くの海外サプライヤーからの調達を経験してきました。そこで、三つの自問点を挙げておきたいと思います。
1.安い海外サプライヤーから買いたいのか、既存サプライヤーを安くしたいだけか?
多くのバイヤーが海外のサプライヤーを視察しに行き、現地サプライヤーの見積りを集めて帰国しては、日本サプライヤーにそれをチラつかせ「おたくもこれくらい安くしてよ」と交渉材料にしか使わない光景をよく見てきました。なるほど、「日本のサプライヤーからだって、結果として安く買えるのであれば、それでもよかろう」という意見もあるでしょう。「最初からそれを狙っている」という場合もありますが、なぜ最初から海外サプライヤーの見積りを偽造しないのかまだ分からないままです。おそらくそのバイヤーが非効率的な人なのか、あるいはマイレージを貯めたいかどちらかでしょう。
2.本当に海外サプライヤーが安いのか?
たいていの人は、既存サプライヤーの価格レベルしか知らずに、海外に出て「安い、安い」と言っているだけです。プレス品が安い?それならば、あなたは日本の町工場から直接見積りを入手したことがあるのか。自分の会社の半径50km外のサプライヤーについてどれだけ知っているのか。ということを調査してからでも海外サプライヤーに手を出すのは遅くありません。
海外出張を何回もして、「ついに海外サプライヤーの製品を採用して劇的に安くなった!」と言っているので、聞いたところ「100円のコネクタが50円になった」と。そりゃ確かに半額にはなっているけれど、一体年間に何個使用するのだ、と問いたい。投資対効果をどれだけ考えているのでしょうか。明らかに人件費の方が勝っています。しかし、このような例は大企業にも良く散見される例です。
また、現在は機械の進化も目を見張るものがあります。それまでは人間の手が必要だったものも、全自動化していることが珍しくありません。真っ暗な工場の中で、機械だけが稼動し生産している現場を何回も見たことがあります。もし、その条件が日本と海外で同じだったとしたら、違うのは電気代くらいです。そのときに本当に日本と海外でコスト差などあるでしょうか?
3.本当に自社で輸入するべきか?
自分で輸入を行なえることが一人前のバイヤーであることに異存はありません。確かに一つのスキルです。しかし、そのことにこだわってはいけない、とも思います。世界情勢が不安定な中、為替リスクがある。そして、海外から調達するとなるとどうしても期間が必要であるため、在庫がたまりがちになる。ならば、割り切って商社を使用するという選択肢があっても良いと思うのです。もちろん、商社にマージンを払う必要性はあります。ただ、それでも自社で輸入を行なった場合と比較すれば良いのです。コスト効果は下がるかもしれませんが、多少マージンを払えば、効率的になればベターでしょう。
海外からの調達はどうしてもコストだけが注目され、どうしても短期的な利点だけを追求しがちになります。しかし、本来海外サプライヤーと付き合うときも、日本サプライヤーと同じように、戦略的かつ長期的な関係を構築する視野を持たねばならなりません。それは当然、現地調達も同様です。
海外のサプライヤーと付き合うときは、多くの障害を自問し自答すること。その果てに、単なるコストメリットを超えた、両社の素晴らしい関係が成り立つのだ、と私は信じています。