4-(3)-3 コスト低減とコスト回避

・様々なCR・CAとその評価

重要なことなので、続けてやや複雑な例を挙げてみます。

<設定>

製品A:100円と、その類似品B100円が存在し、両方とも既存調達品である。製品Aに使用しているレアメタルが高騰し120円にしてくれとサプライヤーが値上げ申請を提出してきた。しかし、サプライヤーも本来は値上げしたいわけではないので、製品Bを代替使用してくれれば、95円に下げても良いと言ってきた。

この場合は、CR・CAはどうなるでしょうか? CRは現行価格の100円と95円の差額に調達予定数を掛け算したもので、「(100円-95円)×調達予定数」となります。CAは、120円と100円の差額に調達予定数を掛け算したもので、「(120円-100円)×調達予定数」です。

<設定>

製品C:1,000円が存在し、既存調達品である。サプライヤーは原油価格の高騰から、1,200円への値上げ申請を提出してきた。バイヤーは交渉したが、1,050円までしか下げることはできなかった。そこで、バイヤーは社内を説得しやすくするために、サプライヤーに依頼して、1,500円の初回見積りをあえて作成してもらった。

この場合のCR・CAは同じくどうなるでしょうか? CRは当然0です。ただし、計算上、CAは「(1,500円-1,050円)×調達予定数」となります。

どう思われましたか。私はここで、最初の話に戻ることになります。私が「バイヤーのテクニックは、価格を下げるときではなく、価格を下げないときにこそ表れるのではないか」と書いたのは、こういうことをたくさん見てきたからです。上記の例では、明らかに前者の方が工夫もあり、コストを下げようという熱意も感じられます。しかし、評価上は後者の方が優れているように思えるのではないか。とはいえ、そういう不正をせずに必死にコストを抑制しようとしている真摯なバイヤーももちろん存在します。だから、CRは評価するが、CAは評価できない、と断定することはあまりに現場で頑張っているバイヤーに向けられる言葉ではありません。

実際の会社の収益には関係がないにもかかわらず、自己の業績を良く見せようとするバイヤーはいつしか天罰が下ります。すみません、言い過ぎました。その人のためになりません。これは個人だけのせいではなく、評価制度も関わっているはずです。私はバイヤー個人に対しては「不正なんて止めようよ」と倫理に訴えるしかありません。

ただ、そういうバイヤーを見極めるヒントはあります。必ずCRと比してCAが異常な額になっているはずです。前任者と比べて、そして他のバイヤーと比べて。おそらく自己の成果を過剰に演出するために、CA額を「創出」していったゆえでしょう。そういうことに注力しているのは、微笑ましいとも言えますし、そういうつまらない仕事をずっと続けることができるのは、一つの才能と言っても良いかもしれません。

でも、そんなことよりも、本当のCAとCRを求めに今日も現場に行ってみませんか。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい