4-(5)-3 サプライヤーデータベースの整備

・データベースの維持と割り切り

しかし、ここまで述べていくと、「それは分かったけど、毎期作るのが大変じゃないか」という声が聞こえてきそうな気がします。確かに、基本情報を毎期入力するのは面倒です。さらに、サプライヤーの社長が交代したときに、いちいち新任者の名前を更新するのか。工場の住所が変更されたときに入力しなおすのか……といったことを考えれば、かなりマメな人ではないと継続が難しいのではないか、と思われます。1社や2社を担当していればまだマシかもしれません。しかし、業界によっては一人が100社以上担当していることもあります。

まさに、その通りで、多くの企業が失敗しているのです。誰かがサプライヤーのデータベースを構築しよう、と言い出します(たいていは実務でそのようなデータベースを使うことのない人たちです)。そして、詳細なデータ項目をばんばん規定します。「この情報があった方が良い」「これもあった方が良い」という感じでどんどん入力数が増えるだけです。「緊急連絡先住所」などという、そんなの携帯に電話すりゃいいだろっというツッコミがありそうなものまで、ありとあらゆるものが盛り込まれスタートします。そして、1年後は古新聞となり、誰も改定しないものだから、誰も見ることはなくなり存在すら忘れ去られていくのです。

あるバイヤーから聞いた話ですが、そこの企業ではサプライヤーが生産できる製品を詳しく、詳しくデータベースとして構築するのだそうです。例えば、単にPLD半導体メーカーだったら、「生産品目:PLD」とさえ書けばよいところを、ピン数・速度・パッケージ等々のスペックをそれぞれ入力してデータとして持っています。これを見れば、設計者も設計しやすいだろう、と。ご愁傷様です。まともな設計者であれば、サプライヤーのホームページを見たり、カタログで確認したりするはずです。そのデータベースでは「生産品目:PLD」とさえ分かれば、それ以上は求めません。社内のデータベースをそこまで詳細化する必要性は全くないのです。

ゆえに、サプライヤーデータベースを部内で構築するときは

「シンプルなこと」

という単純な視点が最も大切になってきます。社内で必要な項目だけが揃っていることです。バイヤーはデータベース構築のプロではありません。多少不恰好で項目が少なくても、データとして使えることが大事です(項目をやたら増やそうとする人を抑制すること)。そうでなければ、継続的に改廃できることもできませんし、時間をかけずに作ることもできません。新規サプライヤーの場合は特に、「割り切り」も必要になってきます。取引をしていないわけですから、書ける内容も当然限られるはずです。それを無理矢理埋めようとしない。会社名と生産品目と担当者のデータくらいを入力するのでも構わない。新規サプライヤーなら、データベースを既に作成しているコンサルティング会社から買っても良いのです。

「結局のところ使えるデータか」という軸を持っておきましょう。

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