3-(3)-2 調達・購買を強くする四つの力
さて、あなたの一言は何でしょうか。
<質問>
『あなたが調達・購買を通じて達成したいことを一言で表現してください』
- 劇的なコスト低減? それとも? 自分の、自社の理念に結び付けて考えてください。
- 印象に残るものを。そして、明確なものを。
4.は、周囲を現状に留まらせずに、次のステップに移行させるために必要となります。強い調達力・購買力を持つ企業に関わる人が、業績がかなり良いにもかかわらず、常に持っているのは危機感です。
「この前は安く買えた。良かった、良かった」で終ってはいけません。製造業とは、終りなき改善に挑む一つの生き様です。このままではいけない、と思うから次のステップへ進むモチベーションがでてきます。現状に満足しているだけでは、次へ進むインセンティブも出てくるはずはありません。
そして、安心感を持つことが、最も危険なことなのです。
これまで、多くの調達・購買部門の方々とつきあってみても、ほとんどの場合は、企業が壊滅的な状況にならないと、根本的な調達手法・構造の見直しは行なわれません。これが、通常の企業です。
好業績に安住していては、見えない綻びが生じていきます。特に、日本の好景気は円高に支えられていることがほとんどで、実質的な改革が推進された結果であることがほとんどありません。
サプライヤーのトップから、末端までに危機感を植えつけること。「なぜ、同じことをいつまでもやっているんだ。なぜ、仕事の質を高めようとしないんだ。このままじゃ、競合他社や海外勢に負けてしまう」と脅すこと。そして、自社に全面的な協力をとりつけ、大胆な提案を喚起すること。
バイヤーからサプライヤーに日々伝えられる現状認識も厳しく、猶予を許さない。それは、危機感を演出するという、まさに醸成力にほかなりません。
あなたがバイヤーであれば、サプライヤーから調達力・購買力のある企業のことを聞いてみてください。そこには、危機感を捏造するかのような試みにあふれています。
危機感がなければモチベーションは生まれないのです。