5-(5)-2 調達業務の「見える化」

・関係者を動かしてこその「見える化」

 

調達・購買業務の「見える化」としては、次のようなものが行なわれています。

  • 高額発注品管理(ABC分析)
  • コスト低減率管理(サプライヤー/バイヤー別)
  • 品質・納期遵守率管理(サプライヤー)
  • コストドライバー分析

おのおのグラフ・図表化されることにより、理解が速くなり、進捗を容易に知ることができるようになります。ただし、この「見える化」自体はどこでも語られていることであり、実際に多くのバイヤー企業で行なわれていることです。しかし、「単なる『見える化』ではなく、その先にサプライヤーの危機感を醸成し、誘導すること」をお伝えしようとまで意識しているバイヤーは多くありません。私がこの1項を割いた理由は、そこにあります。

かなり極端な例を挙げます。例えば、A社が、他社と比べて毎期のコスト低減率が低いということを伝えたいとしましょう。他社平均が5%なのに、A社は3%だったとき。こうグラフ化してA社に見せるとします。

二つのグラフに使っている数値は各社とも同じです。しかし、だいぶA社の悪さの見え方が異なっていると思います。これはトリックではないか? その通りです。トリックであり、グラフの遊びのようなものです。しかし、考えてみて下さい。あなたはA社にコスト低減のグラフ見せて何をしたいのですか? 理解させて終わりではないでしょう。それを見せることによって、「これは大変だ。他社と比べてこんなに悪いのか。これでは仕事が減ってしまう。頑張ってコスト低減せねばならない」と思わせて実行させなければいけないはずです。とすれば、その行動を喚起することが必要になります。

繰り返しですが、これは極端な例です。もちろん、こんなに単純なものだったら誰でもそのトリックに気づきます。ただ、私が言いたいことは「見える化」で視覚に訴えるときには、それにより他者が動いてくれるようなものを狙わねばならないということです。サプライヤーに対しては、何を改善させたいのか。社内資料で使うなら何を強調したいのか。日々の進捗管理のために使うのであれば、何を最も気にしておくべきなのか。そういう目的の果てにある「見える化」でなければいけないのです。

今度からグラフ・図表化による「見える化」を推進するのであれば、覚えておいてください。自分は何を強調したいのかということと、どんな目的を持っているのかということ。生産管理の担当者が単なる納期日程確認会の枠組みを超え、私に伝えたかったことを思い出しながら。

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