3-(2)-1 調達・購買のアプローチ方向
・結果をつぶすのか、原因をつぶすのか
事象に対するアプローチの方向には、二通りあるということを意識しておきましょう。
悪い結果をつぶしこむことは、もちろん大切です。しかし、同時にその結果を引き起こした原因をしつこく自問し、真の原因をつぶしこむ努力も同時に必要になってきます。真の原因が解消されないと、いつまでも同じ結果が導かれます。
「課長。問題が起こったので、ちょっと出張して片付けてきます」と上司に語り、颯爽と出かけていく人。何かとあると、サプライヤーと電話で激しいやり取りをしている人。部署間を駆けずり回り、ばたばたと調整を繰り返し、「ああ、忙しいな」と言っている人。私はこういう人を「仕事ができる人」だと思っていましたし、どこかかっこよささえ感じていました。
その一方で、あまり出張もせず、遅くまで働かず、駆け回ることもなく、もちろん土日出勤なんて絶対しない人。こういう人たちを私は、素直に「あまり仕事を任せてもらっていない人なんだな」と思っていましたし、ときには「あまり優秀じゃないのだろうな」とすら感じていたことがあります。
しかし、仕事の年数を重ねるうちに、そうではないことに気づきました。「忙しい」と言っては目の前の問題処理に追われている人は、ずっと同じことに拘泥されている。出張で飛び回っている人は、何回も同じ問題で時間をとられている。遅くまで働いている人も同様に、同じような仕事を飽きもせずに繰り返している。そんなことばっかりだったのです。もちろん、全員が全員そうだと言う気もありません。ですが、私の感じる限り、それらの人は自分が「忙しい」という立場にいるという一種の麻薬にとりつかれて、そもそも自分を忙しくさせている原因をつぶそうという気概を欠如しているようでした。
そう感じると同時に、仕事を効率的に進め、さっさと帰ってしまう人たちの方こそ、「問題が起きる前に、原因をつぶしこむことのできる優秀な人たち」なのだと思い当たったのです。もちろん、本当に無能で仕事が回ってこない人は別です。ただ、この経験から、「見た目の忙しさに惑わされずに、その人がやっていることを客観的に評価するべきだ」と私は感じずにはおられませんでした。
私は、「忙しい?」と訊かれると、いつも「暇です」と答えてしまいます。もちろん強がりもあるのですが、「忙しい」と自己評価してしまうこと自体が「自分が無能である」と言っているようでいやなのです。これは個人の趣味の問題かもしれません。ただ、ときに、文字通り「ああ、お前は暇なのか」と言われることがあり、それはそれで困ったことなのですが、まあそれは良しとしましょう。
目の前のことに忙殺されがちなバイヤーは、自分のやっていることが、「単なる問題系アプローチしかできていないのか」「問題系アプローチだけでなく、改善のために原因系アプローチもできているのか」ということを意識する必要があります。
結果が出たあとに、それをどうにか目標の姿までもっていくことが結果系アプローチです。それに対して、結果が出る前に原因をつぶしこむことが結果系アプローチと呼びます。
再び病人の例で言えば、「風邪をひいたので風邪薬を飲む」ことが結果系アプローチであり、「風邪をひかないように日々運動して体力をつける」ことが原因系アプローチということです。