3-(4)-2 先端技術と能力の調達
・バイヤーの役割の変化
ここで、最初の「図面が書けない設計者」の話に戻ります。その話は、バイヤー企業は、実際の設計(デザイン)を担当する役割から、技術の調整(コーディネート)を担当する役割になっていることを示すものでした。
自社で設計して、その後にもっと安くするためにVA/VEアイテムをサプライヤーから募る時代ではなくなっています。それならば、最初の設計構想の時点からサプライヤーに参加してもらって、そのサプライヤー最適な製品ができるように、そのサプライヤー自身に設計図すらも書いてもらう時代になっているのです。多くの企業で、設計者の職場にサプライヤーの技術者たちが机をもらい、共同で(といっても実作業はほとんどサプライヤーの技術者が)作図している光景を見ることができるでしょう。
バイヤー企業が新製品で何かの賞に輝いたときに、サプライヤーの設計者が「あれは実はウチがほとんど設計したんだよ」と誇らしげに語ってくれたことも何回もあります。特許もバイヤー企業だけではなく、サプライヤーと共に取得することも多くなってきました。
もちろん、一方では設計を外部に委託することによる、バイヤー企業の技術力の低下を懸念する越えもあります。しかし、繰り返しですが、望む・望まないに拘わらず、そういう流れを止めることはできません。
その流れは、バイヤーの役割も変えていくことになります。これまでのように上下関係の上位に君臨することはできませんから、ときにサプライヤーから振り回されることも出てくるはずです。パソコンを見て下さい。パソコンを自作なさったことがある方はお分かりの通り、中身は電子・電気部品のかたまりです。携帯電話でもかまいません。これらの生産メーカーは、いかに部品メーカーと上手くつきあっていくかが重要になっています。上手くつきあうことができなければ、納期はめちゃくちゃ、設計上の質問もろくにできない、品質トラブルが起きても解析すらできない、という状況を招くのです。
アッセンブリ(組み立て)は誰にでもできますが、CPUやチップ半導体は限られたサプライヤーしか要素技術を持っていません。「納期も、仕様も、数量も。まるで、部品メーカーにあわせて生産しているみたいやわあ」と某携帯電話メーカーの人がボヤいていたこともありました。サプライヤーがバイヤー企業の立場を超越している例など、もはやありふれています。