4-(6)-2 グローバル調達の効果とリスク

ただ、同時にリスクもあります。これまた黒板に書いた内容の通りです。

  • 為替・税法・関税
  • 言語・文化
  • 輸送

これについても、付記しておきましょう。

特に(1)は最も注意して下さい。よく「海外は安いなあ、日本の半分だもの」という会話のとき、為替の条件が語られることはほとんどありません。製品を10%コスト低減することは至難の業です。しかし、為替は簡単に10%変動します。かつて、「これからは中国だ!」し叫び、あるカスタム電気部品を中国からの調達に切り替えて大幅なコスト低減を達成したバイヤー企業がありましたが、その当時と比して為替は1.5倍以上になってしまいました。カスタム品ゆえに簡単に切り替えることはできないと思いますが、今ごろどうしていますか? 目の前のコスト安だけではなく、将来の為替の変動についても考慮した上で決定する慎重さが必要なのです。税法や関税についても、定期的に変化をチェックすることが欠かせません。

(2)は、実務上の大きな障害となりえます。まず言語。日本のサプライヤーだったら、社内の各部署もサプライヤーと直接やりとりしてくれるでしょう。しかし、海外のサプライヤーとなった瞬間に、言語の問題を盾にしてバイヤーに仕事が集中してしまうことがあります。また技術的な打ち合わせをするとき、どうしても技術者間で上手く意思疎通ができず、ミスを引き起こしてしまうかもしれません。

次に文化。異文化と付き合うことは、言語化しなければいけないということです。暗黙の了解を期待するのではなく、一つ一つを言語化して両社で合意しながら進めていかねばなりません。コストの条件についても、発注数量が変化したらどうなるのか、とか緊急納期の場合はコストアップさせるのか、とか。日本のサプライヤーであれば「なあなあ」の関係の中で曖昧にされることも明確にする必要があるのです。

(3)は盲点です。地理的な要因に作用されるのですが、これがバカにならない。海外のサプライヤーから買えば2割も安くなる、と喜んでいても輸送費を見積もってみればその効果がふっとんでいたことなど珍しくありません。特に輸送効率の悪い形状の製品は一つあたりの輸送費がかさむことになりますので、製品の見積りコストだけではなく、輸送費用も忘れずにチェックしておきましょう。

ちなみに、私の例では、こういうこともありました。製品は韓国製光ケーブルです。通常納期で調達していれば、かなりコスト低減効果がありました。ところが、ある日緊急納入が必要となったのです。二日後には必要--、まずは国際宅急便で私に送付してもらって、通関の依頼をして、自社の製品受入れ場に走って持っていきます。すると、「すまないけど、もう5本必要になった」と。再度同じように送付してもらうと、「ごめん、あと10本」と。次は「あと7本だけ」とも。これは私の会社の受注が好調になったことでもあるので、喜ばしいことでした。しかし、調達する立場から言えば、そのケーブルはお客への認定を取得していたものだったので、短期間に切り替えることはできません。どんなに金がかかろうとも国際宅急便で送ってもらうしかありませんでした。そういうことを繰り返していると、国際宅急便業者に払った金額はその光ケーブルの1年分のコストメリットをはるかに消していました。

メリットがあるということはデメリットもある、ということは考えてみれば当たり前のことです。ゆえに、何でも海外調達すれば安くなるという幻想から脱却して、両者を天秤にかけ吟味する冷静さを持たねばなりません。

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