6章3-1<セクション2~CSR調達の実践>
・CSRとはなにか
CSR調達の前に、CSRとは、そもそもなんでしょうか。
一般に「CSR(企業の社会的責任)」として取り上げられるテーマは、次の通りです。
- 社会問題:雇用、労使関係、機会均等、労働・安全・衛生、児童労働、強制労働問題
- 製品・サービス責任の問題:顧客の健康・安全、製品のサービス・ラベリング、プライバシーの尊重
- 企業の法令遵守性の問題:贈収賄、政治献金、不正競争、不正価格設定
- 近年注目される問題:正しい環境への配慮や社会法規の遵守
このように、「CSR」の対象となる範囲は、とても広がっています。また、広いだけでなく、CSRにはもう一つ重要な特徴があります。企業として実践するCSRとは、社会と市場の変化によって決定される点です。対象とする範囲が広い上に、経営環境、市場環境の変化によって、求められる社会的責任も変わってくる。これが、CSRがわかりにくい原因です。
みなさんは、自分の勤務先がCSRにどのように取り組んでいるかをご存じでしょうか。CSR調達を実践する際にも、まず上位にCSRの考え方、どのように社会に貢献してゆくかといった前提条件が必要です。
企業は、その事業運営を通じて、製品やサービスによる貢献、雇用による貢献、納税による貢献をおこなっています。CSRとは、そういった事業運営による貢献内容の改善と、事業運営による社会への影響で発生する責任のまっとうを通して実践していくものです。
また、上記のうち、社会問題の中には、「児童労働」や「強制労働」といった、日本国内を見る限りは想像できないテーマが入っています。しかし、安い労働力を求めて海外展開し、法整備や管理の目が行き届かない進出国のサプライヤで「児童労働」や「強制労働」が問題になるケースが実際に発生しています。
日本の場合、CSRが企業の不祥事と合わせて語られる場合があります。自動車メーカーのクレーム隠し、食品偽装の一連の問題が、企業の社会的責任を果たしていないとされています。しかし、日本国内で問題となっている企業の不祥事は、クレーム隠しにしても、食品の産地や品種、賞味期限の偽装にしても、CSRというよりも、コンプライアンス(法令遵守)の問題です。