5章6-7<セクション5~コラム「生産回帰しているのか」>
(3)海外拠点の空洞化対応
生産回帰の結果、生産を失う海外拠点で発生する問題です。キャノンの例では、国内での生産を全体の40%から60%をめざし、かつ海外工場の縮小はしないと言明しています。
実行には、国内外合わせた生産総額の増加が必要です。また、米国メーカーでも生産回帰をおこなった後、R&Dセンターの設立といったより付加価値の高い業務を現地化しています。これは、いったん進出して築いた現地でのリレーションの維持する目的です。
生産回帰の流れによって仕事を失う可能性が高い中国の場合、現地労務費の上昇により生産場所としての魅力は薄れたかもしれません。しかし販売先としての魅力は、引きつづき保っていますし、高付加価値業務に必要な優秀な人材も存在します。海外拠点の空洞化対策は、調達・購買部門の役割ではないかもしれませんが、この点は長期的な視野による賢明な判断が必要です。
(4)物流~Logisticsの強化
この点は、調達物流と販売物流の両面でのLogistics機能の強化です。まず、調達物流では、生産は回帰させても調達先は海外との場合を想定します。特に、短期的対応としての生産回帰では、自社都合に合わせて、サプライヤの国内回帰がむずかしいかもしれません。その場合は、海外進出先のサプライヤから購入し、円滑なLogisticsによって、生産スケジュールどおりの納入を実現します。
また、Logistics強化のもう一つ重要な目的は、短納期対応ニーズです。インターネットやテレビの通信販売の拡大によって、従来週末に集中していた売れ筋の時間帯が、毎日午前0時前後に新たな売れ筋時間帯を生んでいます。夜の12時にオーダーして、翌日現品が届く、そういったビジネスモデルです。こういったモデルへの対処は、リードタイムの短縮だけでは対処できず、物流(Logistics)に登場している様々なサービスを活用しなければなりません。そういった新しいソリューションへ関心もって情報収集をおこないます。
ここまで、生産回帰を読み説いてきました。「生産の空洞化」によって失われた日本国内のリソースは、企業マネジメントの意思決定だけでは戻りません。回帰とは、実際には新たな生産体制構築です。もし生産回帰への取り組みがおこなわれる場合は、決して安穏と対応せずに、緊張感を持って対処してください。