3章-4-6<セクション3~②カテゴリごとの具体的な接し方>
・カテゴリごとのサプライヤとの具体的な接し方「重要サプライヤ」編
話を戻します。つぎに、相思相愛であるべき重要サプライヤとの接し方です。
さて、ここからやや精神論も含めたうえで、重要サプライヤから、より実力を発揮いただくための方法について述べます。ところで、取引相手がずっと「こちらのためにリソースを振り向けた活動をし続けてくれる」ためには、どのような方策が必要でしょうか。
ここで重要な点は「漫然と結果論で続いた」のでなく、意志を持って「続ける」ための方策です。このためには、二つの要素が必要だと考えています。
一つ目は時間と成果の共有体験による一体感の醸成です。企業同士とはいえ、企業=法人を構成するのは人間です。バイヤー企業とサプライヤ担当者の間で、なんらかの課題/問題を一緒に解決に導いた同じ体験が、関係の根幹を為します。学生時代の同窓生、同じ部活動の仲間、戦友といった仲間は、時間を隔てもその時の共有体験によって当時の関係を再現することができます。しかし、これだけでは人と人との友人関係と変わりません。営利を追求するためのサプライヤとの関係構築では、もう一つの要素が非常に重要になってきます。
二つ目の要素は、適度な緊張感です。関係を構築し、良好な状態で継続するために、もっとも避けなければならない事態は「馴れ合い」です。一定の規模以上の企業で組織される取引先協力会が、前述のとおり、なぜ機能しないのか。多くの場合、会合や懇親会といった活動の中で、新陳代謝がおこなわれずに、双方に甘えの気持ちが生まれ、馴れ合い関係になっていることが原因です。「馴れ合い」状態は、一見すると良好な関係と判断できます。どちらかがどちらかに依存している関係が問題です。
サプライヤは、QCDを確保した発注品の納入を確実に実行し、プラスαの便益をバイヤー企業へ提供する。バイヤー企業は、サプライヤの円滑な納入をサポートし、より良い取引条件を模索する改善活動を継続的に実施する、そんな相互補完な関係が必要なのです。そんな関係のなかでの「緊張感」は理解しづらいものです。
たとえばJIT(ジャストインタイム)とは、バイヤー企業側の生産サイクルに合わせた納入をサプライヤに強いるものです。しかし、同期させるポイントは納入日、あるいは納入時間だけでなく、その他の細かな条件も「同期」する必要があるわけです。その同期も、バイヤー企業とサプライヤのやりとりの積み重ねで実現されます。取引継続の歴史によって蓄積された相互理解によって、コスト発生を抑制できます。
また最近では、コンカレントエンジニアリングやデザインインといった言葉、そして調達・購買部門でも開発購買といった言葉で、設計・企画の初期段階から外力=サプライヤの技術力を活用することが必要になっています。主だった製品やサービスを一足飛びに変えることは難しいですね。継続性を持った製品企画・開発には、これまでにも取引関係にあったサプライヤの協力が不可欠です。サプライヤ評価に際して、D:開発がその項目として定着している理由も、実際にサプライヤの設計力を活用するバイヤー企業が増えている証ですね。バイヤー企業がサプライヤの設計力を活用する場合でも、これまでのビジネスの蓄積が有効に作用します。