3章-4-7<セクション3~②カテゴリごとの具体的な接し方>

・密接な関係ゆえのデメリット

しかし、これまでに述べたような関係構築でサプライヤマネジメントにおける関係継続のメリットが終わるわけではありません。前述の内容には、実は大きな問題もあります。

日本企業のビジネス上の取引で、しばしば問題になるのは「筆舌に尽くしがたい」とか、「あ、うんの呼吸」といった言葉で表現される日本人、日本企業同士の取引条件に含まれる「非明文化条項」です。サプライヤとの取引を継続させて、相互理解を高めた結果、その内容が双方の「暗黙知」になってしまうことが問題です。

バイヤー企業とサプライヤとの間の、様々な諸条件が暗黙知になった場合、最終的にメリットが生まれるのはどちらの側でしょうか。バイヤー企業側に売り込む側から考えると、明文化された仕様書や図面といった文書には記載されない内容への理解があることは、競合会社に対してメリットが存在すると考えるべきです。他の取引の実績のないサプライヤは、簡単にはバイヤー企業の要求を満足できない訳です。このことが、他のサプライヤとのビジネスの可能性を阻むものであれば、他のサプライヤから見た場合、立派な発注障壁となります。

サプライヤとの関係継続によって進んだ相互理解の内容は、バイヤー企業によって「明文化」しなければなりません。そして、現在と将来に別のサプライヤへの発注可能性を広げなければなりません。

関係を継続させ「進化」する場合には、より上位者(意志決定者、マネジメント)を伴い、かつ、より戦略的な関係構築をおこなわなければなりません。これは戦略構築の初期段階から問題意識を共有し、共同して問題解決を図ってゆくためです。この「より上位者と、より戦略的な」合意が存在しないことが、ただ漫然と惰性で関係を継続することに他なりません。このような事態は是非避けなければならないのです。

前者の「より上位者(意志決定者、マネジメント)を伴う」ための施策は、サプライヤミーティングの「3.個別開催」ですでに述べました。しかし、重要サプライヤとの関係強化にもおなじく考え方は使えます。下の図をご参照ください。

発注側(バイヤー企業)と受注側(重要サプライヤー)で、同じ部門があるとしたうえで、各部門のそれぞれの職位の人が、どのていど人間関係を作っているかについて見える化したものです。この面談なり人間関係のマネジメントによって「より上位者(意志決定者、マネジメント)を伴う」戦略の礎が完成します。

次に「戦略的な」合意については、ミーティング等で共有した情報をベースに、共同開発等を決定することを指します。ポイントは「どうやって戦略を共有するのか」です。まず、双方の戦略について定義をおこないます。

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