5章2-3<セクション1~グローバル化の正しい考え方>
・グローバル化=グローバルコンプライアンス化
ところで、このトランスナショナル戦略、グローバル戦略、マルチドメスティック戦略のどれを採用するとしても、自国のみでの調達は困難です。
必然的に海外サプライヤの活用機会が拡大します。ここで、参考になるのがアップルの対応です。アップルは、サプライヤへのコンプライアンスを重視してきました。これはアップルが委託しているサプライヤ群において労働問題が多発したからです。アップルは、サプライヤレスポンシビリティ(サプライヤへの責任)として、さまざまなレポートをウェブに掲示しています。そしてそれは、「Educating and Empowering Workers」「Labor and Human Rights」「Health and Safety」「Environment」など多岐にわたっています。
正直に申せば、海外サプライヤについてここまで考える必要があるのだろうか、と呆れてしまうレベルです。しかし、やはり海外展開は、サプライヤ対応が重要になります。それは、その国に根付く企業と、いかにして企業活動のサイクルを創りあげるかといった問題と同義だからです。そうすると、やはり調達の役割が大きくなります。
グローバル化とは、組織戦略を考えると同時に、グローバルコンプライアンス化も指すようになっていることは覚えておいてください。
これまで基本方針や概念をお話しました。さてそこで、より具体的な海外展開について考えていきましょう。ここでは、単なる海外展開だけではなく、グローバル展開後の国内調達について、ならびに国内サプライヤへの倒産予防実務について解説します。
- グローバル展開に伴う調達部門の役割
- 国内サプライヤへの対応
- 国内サプライヤの倒産予防実務
なお、この章では、このところ叫ばれている「生産回帰はほんとうに起きているか」についてかなり長めに取り上げます。これはここ1~2年のトピックにすぎません。しかし、あえてコラムに挿入したのは、検証の過程における、他にも使える調査方法や思考方法についてお伝えしたかったためです。
(注・なお「I-Rフレームワーク」について日本語の解説をお読みになりたい場合は、琴坂将広先生『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社刊)が参考になります)