5章6-4<セクション5~コラム「生産回帰しているのか」>

2-4 物量

国内貨物輸送量は、平成8年(いまから約20年前)の68億トンをピークに減少しつづけ、現在では48億トンにすぎません。公共投資が減ってしまったために建築資材を運ばなくなったこと。そして、モノの生産の大半が海外へ出て行ったこと。そして、成熟国家たる日本では、ITやソフト、サービスに経済を切り替えていったので、そもそも「運ぶものがない」というわけです。

「国土交通省/最新の陸運統計要覧・運輸」(http://www.mlit.go.jp/k-toukei/16/2_unyu.html)を見ても、残念ながら、これこそ生産回帰といえるレベルの動きは見られません。

これまで物量が減り続けてきた業界関係者からすると、生産回帰とは単なる反動レベルにすぎないと見えるようです。これまでアジアに流出した莫大な数量をとうていカバーしないともいいます。

 

・米国「国内回帰」事例分析

前節で、日本における生産回帰状況を分析しました。率直にいえば、生産回帰の傾向は好意的に解釈しても日本全体の動きではなさそうです。

ところで米国では日本よりも一足早く2011年に「生産回帰」が注目されました。2008年のリーマンショックによって、金融サービス業にメリットのある景気刺激策が打ち出せない背景も手伝って「製造業への期待」がクローズアップされたのです。

また、大手シンクタンクの衝撃的なレポートによって、生産回帰の可能性が大きく報じられました。「Made in America, Again 」( http://www.bcg.com/documents/file84471.pdf )。これは、ボストン コンサルティング グループが2011年8月に発表したレポートです。肝要は次の通りです。

  • 中国の賃金上昇、米国の生産性向上、ドル安などにより、北米市場向け製品のうち多くは、米国で生産した場合と中国で生産した場合とのコストの差が今後 5 年以内にほぼなくなる見込み
  • 米国南部と中国揚子江デルタ地域の賃金を、生産性を加味した上で比較すると、2010年には中国揚子江デルタ地域の賃金は米国南部の 41%だったが、2015 年には 61%へ上昇

このレポートは、日本のマスコミやシンクタンクのレポートでも報じられ、引用が多く記憶に残っている方もおられると思います。

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