5章5-1<セクション4~③国内サプライヤの倒産予防実務>

・国内サプライヤの倒産と予防

国内産業の縮小にともなって、よく年間倒産件数が注目されます。また、景気回復の兆しを定量的に把握するためにも、おなじく年間倒産件数が使われます。ただ、さほど知られていない事実は、休廃業・解散件数は倒産件数の2~3倍に達していることです。倒産以外にも、事実上、供給できなくなるケースは多いと覚えておきましょう。

日本では1980年代から開廃業率問題が顕在化していました。新たに事業を始めるケースと、事業を止めるケースでは、後者が多い状態がすでに30年以上も続いています。「開廃業率の逆転」として、中小企業白書でも1990年代は大きく問題視されていました。さまざまな取り組みがおこなわれてきたものの、改善せず今日にいたっています。

では、まず現場観点としては、いったいこれら(倒産、休廃業・解散などを問わず)の事前察知のためには何をすればよいでしょうか。3点をあげます。

 

1. 設備状況(現状確認)
これはサプライヤを訪問して、設備の状態を確認します。設備が新しいか/古いかに加えて、メンテナンスがしっかりおこなわれているかどうかを確認します。例えば、5Sの観点で、整理整頓が実行されているかどうか。一見して「雑然としているな」「汚いな」といった印象を持ったら、次の確認ポイントへ移行します。

 

2. 設備投資の状況確認
最近の設備投資の状況を確認してください。金融機関の貸し渋り、貸しはがしといった横暴さだけがマスコミに報じられます。しかし、着実に進化している企業には、金融機関も融資をしますし、設備投資をおこなっています。私が普段購入しているアイテムは、機械部品といった従来型の製品です。しかし、企業内のマネジメントを着実に実行して、最新の設備導入に取り組んでいる企業もあれば、20年、30年前の設備を使っている企業もあります。重ねていいますが、古い設備が悪いと言っているのではありません。管理状況がポイントなのです。そして、新たな設備投資をおこなっている場合は、やはり休廃業・解散といった事態からは遠いと判断できます。

 

3. 経営状況および経営者の確認
訪問したサプライヤ内を見て、従業員の年齢層を確認します。従業員の年齢構成は、企業の継続性を判断する上で、重要な基礎データです。また、経営者の年齢も確認します。経営者が60歳代以上であれば、後継者の存在も確認します。これは、訪問先のサプライヤの経営者にじかに確認しづらい場合は、後日でも良いので営業担当者に確認します。後継者がいないのは、企業にとって大きな問題です。もし、後継者がいない、あるいはいるかどうかよくわからない場合は、休廃業・解散の最短距離の企業かもしれません。

 

この3ポイントを、1→2→3の順に確認します。あえてもう一つを申し上げれば、「会社の雰囲気」を感じ取ることです。後継者がいないとは、企業には大きな問題で「この先どうなるのだろう?」といった不安を従業員が持ちます。定性的にしか指摘できないものの、その不安感が企業内にもかならず雰囲気として表われるのです。

後継者がいなくて、その事実を従業員が認識している場合、独特の思い雰囲気が企業内に漂います。そういった「兆候」を日常的に感じて、局地的供給停止の事態を防止してください。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい