7章4-5<セクション3~社内関連部門とのコラボレーション>
・3.生産管理部門との連携~(1)「納期と数量の調整」
生産管理部門との協業タイミングは、大きく事前の準備的な機会と、事後のトラブル処理的な機会の二つです。調達・購買部門でサプライヤから製品やサービスを購入する際、購入指示は生産管理部門で作成された生産計画によっておこなわれます。
これ(仕様)を、これだけ(量)買ってと指示を受け、注文書を発行します。あるいは契約書を締結します。文字通り、生産管理部門は、調達・購買部門の前工程です。
連携ができていない際によくありがちなのが、サプライヤの納入リードタイムを無視した短納期設定と、サプライヤの生産能力を大きく超えた多発注数量設定でしょう。
QCDにプラスされる言葉に、F:Flexibility(柔軟性)があります。当然、需要変動への迅速な対処は必要です。しかし、需要変動の対処を、なにもかもすべてサプライヤまかせとすることは避けましょう。
発注量が増えるから良い=サプライヤも嬉しいはずだ、とはいきません。無理な期日設定のまま注文書を発行した場合、サプライヤとの信頼関係も損なわれる可能性があります。無理な納期を設定した場合、サプライヤの営業パーソンが、サプライヤ社内の関連部門を説得できません。
逆も問題があります。過去に提示した購入見通しにたいし、実際の発注量が減少してしまう場合です。想定を大きく下回る量しか購入できない場合は、在庫をどうするのか。生産に初期投資が必要で、その償却分のコストが未回収であれば、その面への補償を要求される可能性もあります。
そのような事態に陥ることなく、円滑な購入を継続するには、どうすれば良いでしょうか。具体的には、生産管理部門と連携して次の取り組みをおこなうことです。
①許容する変動率を設定する
生産管理部門からできるだけ早く内示数量を提示してもらうことと、同時に調達・購買部門の仕事として、その数量に対し±××%の変動への対応をサプライヤとあらかじめ契約しておくことです。繰り返し購入する場合に有効です。
②サプライヤの生産能力(余剰能力)を定期的に掌握し社内へフィードバック
近年厳しい市場環境の下、どんな条件でも受注する傾向が強まっています。従来よりも短納期で納入できれば、サプライヤにとっても売上が確保できるのでメリットでもあります。また、購入量が増加すれば、調達・購買部門としてもサプライヤとの関係強化につながります。
ただし、量が増えて、納期トラブルを起こし、結果サプライヤとの関係も悪化してはいけません。そこで調達・購買部門はサプライヤの生産能力、特に余剰能力へ注目します。普段のサプライヤ担当者の会話のなかで、「これから(発注量が)増えても大丈夫かどうか」をヒアリングします。
そして、できれば生産管理部門に定期的に情報を提示しましょう。もちろん、だからといって生産管理部門がすぐさまサプライヤへの発注数量を減らすかは別問題です。そのケースでは代替サプライヤの紹介もセットになるでしょう。ただ、ここで重要なのは、発注後に納期フォローを繰り返すだけではなく、事前の社内通知によって、早め早めの行動を喚起することです。
やや定性的な言い方になりますが、生産管理部門が短納期で購買指示を出すときに「これは調達担当者が怒り出すかもしれない」と思ってもらうこと(怒るかどうかはもちろん比喩です)が大切です。