3章-2-2<セクション1~概要編『サプライヤマネジメント』>
・サプライヤ評価と区別化
サプライヤに求める製品や、品質基準といった購入条件は、企業によって異なります。したがって、サプライヤマネジメントの内容は、企業によって実践内容が異ならざるをえません。そこで二つのポイントが明らかとなります。
- サプライヤマネジメントとは、企業ごと独自の判断基準によってサプライヤを評価すること
- 評価した結果によって、おなじく企業ごとの戦略に基づき、サプライヤを区別して扱うこと
この二つによって、企業の競争力や優位性の確保に貢献します。「独自の判断基準」は、バイヤー企業の企業戦略にその根拠を求めます。バイヤー企業が、市場において、どんな優位性によって競合他社に勝とうとしているのか。その獲得したい優位性の構成要素に、サプライヤからの購入品やリソースが貢献できる可能性を見極めます。
各企業で設定したサプライヤ評価基準を活用して、サプライヤを評価していきます。重要なのは、この評価を継続することです。同じ購入品を買い続けていたとしても、バイヤー企業の知らない部分で、サプライヤは変化しています。経済環境から、天候、作業員に至るまで、常に変化の中にあります。その中で、常に同じ品質を確保し、継続するためには、周囲環境の変化に応じて同じアウトプットを出し続ける仕組みが必要です。変化を掌握して、最適なサプライヤを選び続けるためには、サプライヤへの継続的な現場掌握の取り組みが必要です。
つぎに、「区別して扱う」とは、評価レベルにおうじてサプライヤをカテゴライズし、それにおうじて接し方を変えることです。具体的には発注シェアの変更から、ミーティング等の設定までにいたります。この区別については、重要な箇所ですので、節をあらためて説明していきます。
いったん取引を開始したら、そのまま続けるのではありません。サプライヤマネジメントの目的とは、評価とシェア変動等によって、サプライヤとの動的な関係、かつ緊張状態をつくりだすことでQCD他を向上させることです。
くわえて、自社の事業活動を進めるために必要なサプライヤの確保が、サプライヤマネジメントの目的でもあります。そのため、同じようなリソースを持つ複数のサプライヤから購入する場合は、確固たる理由が必要です。分散して発注し、競合状態を創出する。あるいは、想定されるリスクに対応して、サプライヤの所在地を分散させるといった明確な根拠がなければなりません。そして、それはまさにサプライヤ戦略にほかなりません。
顧客からの高い品質管理要求や、CSR意識の向上、サプライチェーン全体での持続可能性を確保する環境意識の高まりによって、サプライヤ一社と取引を継続するためのバイヤー企業が費やす手間やコストは、増大傾向にあります。グローバル化の進展によって、サプライチェーンは地理的にも広がっており、調達担当者への負荷も増えています。
最新のサプライヤマネジメントの方向性は、できるだけ少ないサプライヤによるリソースの確保です。集中化による低コストの追求も、取引を行なうサプライヤの数の最少化はメリットを生みます。サプライヤとの関係構築と維持には、バイヤー企業の手間や費用が必要となります。「このサプライヤは、自社の事業運営に必要か」との厳しい視点も、適切なサプライヤマネジメントの実践には欠かせません。
またその際には、通常の調達・購買業務知識を逸し、決算書を読むスキルも必要となってきます。選定するサプライヤは経営上の問題がないかていどは把握すべきだからです。
そこで、ここでは次節以降、サプライヤマネジメントで重要となる四つの観点から説明していきます。
- サプライヤの具体的カテゴリわけ
- カテゴリごとの具体的な接し方
- サプライヤマネジメントで最低限必要となる決算書の読み方