3章-1<ケーススタディ③~主要サプライヤがいうことを聞かず、協力会サプライヤもめちゃくちゃ>
私は電機メーカーに勤めており、白物家電の外装成形部品を担当している。企業の歴史が古いこともあって、各サプライヤとの取引歴史も長い。なかには、創業当初から支えてくれたサプライヤも多い。
しかし、それはこのところ制約にもなっている。白物家電は海外勢との競争も激しいため、本来ならばサプライヤを絞ったり徹底的に競合をしたりせねばならないところだ。ただし、そのような環境にない。主要サプライヤは、いつも設計者から相談がくるものだから、特別な営業活動をせずとも受注できると思っている。しかも、とくに毎年の改善も見えない。
さらに協力会サプライヤは、自分たちが外されることは100%ないと思っているのか、態度が露骨だ。競合を匂わせると、つねに「これまでの関係」を全面に出してくる。あるとき、海外サプライヤで検討したときもあったものの、協力会の連中は、私を通り越し上司に相談しにいった。「冷静に判断するように」とのことだったが、事実上は海外サプライヤのデメリットばかりを指摘され、結局は既存の協力会サプライヤは不動だった。
かならず仕事がくるものだから、わざわざサプライヤも調達・購買部門にやってくる機会も少ない。あうのは、納品書を持ってきたり、支払いの通知書を渡したりするときくらいだ。
ただ、環境が悪いだけではない。私をはじめとする調達・購買部門の人員も、結局のところどのサプライヤが良くて、どのサプライヤが悪いといった主張は、感情論でしか述べていない。QCDその他でちゃんと評価すればいいだろうが、その評価をしたところで、その後の方法論をわかっていない。
さらにはサプライヤの決算書だって読める人間はほとんどいない。部長はよく「調達担当者は、価格とサプライヤを決定するだけではなく、サプライヤの経営にも踏み込まなければいけない」という。しかし、経営どころか、決算書の知識が欠けているし、なによりトップと会ったことのないサプライヤがたくさんいる。
それにしても何から手をつけるべきかもわからない。この荒廃とした状況のまま、私の会社はだらだらと停滞を続けていくしかないのだろうか。
協力会にせよ、なんにせよ、そもそも崇高な目的では一致しているはずだ。私の会社がつくる製品で、社会をよくしたい。そのために、サプライヤは部品を納入することで貢献したい。私たちは、すぐれたサプライヤとは、その発注量をどんどん増やしたい。そうすれば、サプライヤは生産効率があがり、身を切ることなく安価な製品生産が可能となるだろう。
いまの状況を見ると、誰もが自己の利益のみを考えているように見える。このままでよいのか。そもそもサプライヤを管理することで、企業集団の軌を一にすべきではないか。